ジャンル分類と50音順の並べ方だけだと、本が孤独に見えることがあります。本を文脈でつないでみると、本と本がつながって、違う表情が見えてきます。なぜ、三冊かというと・・・
井上ひさしは「ニホン語日記」にこう書いています。『混沌たる時の流れを過去・現在・未来と三つに区切ると、時間が辛うじて秩序だったものになる。鮨屋の主人は自店のにぎりを「松・竹・梅」 に分け、鰻屋の亭主は自店の鰻丼を「特上・上・並」の三つに分けて、店の売り物のすべてを表す。混然としたものを一つで言ってはわけがわからない。二つで言っても据わりがわるい。三つに区分して言うと突然、構造が安定し、混然としたものの正体が見えてくる』
本と本 本はつながる。
本と人 本とつながる。
人と人 本でつながる。
さあ、「三冊堂」!開店のお時間です。
2002年、現役サラリーマン初のノーベル賞受賞として日本国内で時の人となった、ノーベル化学賞受賞者・田中耕一さんの自伝『生涯最高の失敗』。本書も、本人が書いた「田中本」として大きな話題になりました。「おくゆかしい」と表現された田中さんが執筆した理由には、「理系の人間は 自分を理解してもらう努力が不足している」という課題に自ら取り組むためでもあったそうです。ノーベル賞を受賞したことで変化した周りと自身について語ったコトバは、田中さんの人柄があふれていて、ノーベル博物館の館長があげた個々人とって創造性をあげる9つのことを誰もが持っていると述べているのは、技術者のみならず万人に光をあてているように思えます。
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食欲の秋、読書の秋。秋に囚われなくとも、食欲と読書は似た者同士かも知れない。手に取って、食さなければ、目を通してみなければ、その味はわからない。さて、お腹が空いてきそうな三品を揃えてみました。食べてみてください。
三島由紀夫、手塚治虫、開高健、向田邦子など31人の作家が日頃食したお菓子やフルーツを通じて、その作家の人柄を紹介した『作家のおやつ』。甘さ、辛さの中に作家の隠された素顔が現れる、おやつアルバムです。作家たちが書斎でどんなおやつをつまみながら執筆していたのかを、あれこれと想像して、興味がわいてきます。意外と、作品と結びついたりして・・・。
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女子高生・リョウは携帯電話を持っていない。そんなリョウの楽しみは、空想の携帯電話をイメージすること。ある日、頭の中で空想の携帯電話が鳴りだす。相手は1歳年上のシンヤ。彼もリョウと同じ孤独を感じていた。短編集の中に収録されている『きみにしかきこえない Calling you』は、頭の中の携帯電話で孤独だった2人が繋がる物語です。インターネットの普及で、他者との繋がりが簡単になったからこそ出てくる悩みもあります。リョウは、人の言葉によって傷つき、殻に閉じこもるようになります。しかし、人の言葉によって喜びを感じ、心を解放していくのです。何気なく発する言葉で相手を傷つけることも喜びを与えることもできるんだなと改めて考えさせられます。
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