2024年 (令和6年)
5月5日(日)
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 『木のみらい、幕別(ここ)から。』

 北海道内では60%。全国では27~28%。これが一体何を示す数字かすぐにわかる人はどのくらいいるでしょうか。
 正解は「木材自給率」。前者が、北海道において道内産の木材がどれほど消費されているか、後者が国内産の木材が国内でどれほど消費されているかを示すものです。こうして数値にすると道内ではかなり木材の地産地消が出来ているように見えますが、国内全体で見るとそれほど消費できていないと言う事がわかります。
 この現状に危機感を感じ、何とか現状を改善できないかと日々日本の木材供給のこれからを考え奮闘しているのが瀬上晃彦さん。瀬上さんはカラマツ製材の製造を主に行うオムニス林産協同組合及び有限会社瀬上製材所の代表理事を務めています。
 瀬上さんの活動拠点である瀬上製材所は十勝・幕別町内に位置し、周囲を木々に囲まれた環境の中で道内のみならず全国各地に出荷されるカラマツ製材・チップの製造・販売を行っています。出荷された素材は製紙や住宅、パレット材などに活用され、私たちの生活に役立てられるものとなります。
瀬上製材所内で扱われる木材の9割はカラマツ、残りの1割はトドマツです。この二つの木は戦後道内に多く植林されたもので、製材所の周辺にも多く生息しています。瀬上さんはこのカラマツの価値を、今一度多くの人々に見直してほしいと考えています。
editer sega 07 「カラマツは従来ねじれや収縮、割れなど変形する特徴を持つことから『住宅には不向きな木』とされてきました。ところが植林から40年近く経った頃から成熟してくるカラマツは、特徴的であったねじれが弱まり木自体の強度が増す傾向にあることがわかりました。色もクリーム色から赤みがかった見 栄えのいい色になるため、住宅向けの素材として評価され始めています。」
 しかし冒頭でも述べたように現在日本国内での木材自給率は低く、国内で使用される木材の多くは海外からの輸入に頼っているのが現状。その理由は意外なところにありました。
 「日本には木材に使える木が使っても使っても消費しきれない程豊富にあります。しかし日本の山は道が整っていないこともあって木材の運搬にとてつもなく費用がかかるため、その結果低コストで済む海外輸入に依存せざるを得ないのが現状です。」
 私は近年の報道から「割り箸を使うと森林破壊につながる」、「森林伐採のせいで木材が不足している」そんなイメージを持っていました。しかしここで瀬上さんの話を伺ってそのイメージが大きな間違いであったことに気付くことが出来ました。
 瀬上さんは木材自給率の向上を目指して「カラマツという木がある事を地域の人々に知ってもらう」ための活動に一層力を入れています。カラマツ等十勝で生産された木を利用した住宅建築を推進する「とかちの木で家をつくる会」に参加したり、カラマツから生まれた積木ブロック「からっく」をネット販売しているほか、地域の学校等の教育施設にも寄贈されているのだとか。
editer sega 14 「国産の木を使おうという動きは全国的に始まりつつあります。不要な木を切っていかないと逆に山も木も育たなくなってしまう。その事実を知ってもらい、山を育てるという意識を持ってもらうためにも木の価値を見直してもらえたらと思っています」。
 十勝のため、木や山のため、日本の林業のこれからのためを思いながら、瀬上さんは今日も、森の匂いに包まれた製材所で汗を流しています。

取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:小椋耶那