11月29日(土)に開催した『エディター養成講座』で、幕別町内の「オムニス林産」へ実際に取材に行きました!積み上げられたたくさんの木材に圧倒されながら、木が私たちの手元に届くまでのお話を伺いました。
第1回目の文章&取材ポイント講座のレポート
◆斉藤鮮魚店◆
◆木川商店◆
『木材工場を見学して』
「ガー!ゴー!」。ものすごい音に思わず耳をふさぎたくなった。瀬上晃彦さんが社長を務める「オムニス林産」という製材工場内を、見学者全員ヘルメット着用で、案内していただいた時のことだ。
今まで抱いていた「製材工場」のイメージといえば、ものすごい力が必要で、働いている人は若い男の人ばかりだと思っていた。けれど実際は機械化されており、丸太がベルトコンベアの上を自動でゴロゴロと転がり、太さごとに選別されていた。一人の社員さんが木から随分と離れたところで複数の画面を見ながらその様子をチェックしていた。それを遠隔オペレーションシステムと呼ぶのだと、瀬上社長が教えてくれた。工場見学を通し、この仕事には体力だけではなく、集中力、観察力、注意力が必要なのだと感じた。
その後、事務所に移り社長から色々なお話を聞いた。その中で一番私の印象に残ったことは「カラマツ」についてだ。
「カラマツ」は元々は長野県が原産なのだという。成長がはやく、しかも丈夫なので、今後は住宅用に有効利用しようと考えているそうだ。有効利用しなければ山には元気がなくなってしまうけれど、有効利用することで山は元気になるのだと教わった。
本州は、急な斜面が多く木を運び出すのが大変だが、北海道は、広い平地が多いため木を比較的運びやすいという。将来、自分が家を建てる時に北海道のカラマツを使いたいと思った。
取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:森下実紀
『製材工場を見学して』
「地元の国産木材に高い付加価値をつけて、生産者に利益を還元したい」。
そう熱く語って下さったのは幕別町にある(有)瀬上製材所社長の瀬上晃彦氏。瀬上氏はオムニス林産協同組合代表も務めていらっしゃる方だ。文章講座の取材に対して快く、どんな質問にも丁寧に答えて下さった。ひとたび国産木材の話題になると、途端に熱が入り饒舌になるその姿からは、国産木材に対する強い愛情が感じられた。
日本の国土の約七割は森林。北海道の森林面積のうち四十七パーセントは人工林で、そのうち十勝のカラマツが七十五パーセントを占めているといわれている。つまり国産資源は沢山あるのだが有効利用できておらず、安い海外木材の輸入に頼っているというのが林業界の現状なのだ。
当組合で扱うカラマツは国産だが、その八割はパレットと呼ばれる比較的安価な物流資材に加工され、使われている。しかし、カラマツをより高付加価値な住宅用木材として活用しようと、瀬上氏が会長となり、平成十六年に「とかちの木で家をつくる会」を発足させた。地元で住宅用の木材を扱うことによって得られる利点は主に2つ。1つ目は、お客様の顔が見えること。そして2つ目は、直接の評価を知ることが出来ること。「本当によかった」というお客様からの声が特に嬉しいとのこと。
とはいえ、一般の人にとっては、カラマツといってもなかなかピンとこないかもしれない。特に住宅というと一部の人にしか関係のない分野と思ってしまいがちだ。そのため、それらを解消し、カラマツの良さを知ってもらうための工夫として、「積木」や「小物」を製品化し、販売する活動も行っているという。
瀬上氏に様々な取り組みを聞くことで、木のぬくもりを感じながら生活できる、十勝という恵まれた土地の良さを改めて知ることが出来た。
取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:森下満智子
『カラマツで住宅を』
幕別町百年記念ホール駐車場北側に位置する、オムニス林産協同組合を訪ねた。敷地内に足を踏み入れた途端、見渡す限りに積まれた木材が目に飛び込んできた。後でわかることだが、これらの九割がカラマツだ。事務所では代表理事の瀬上晃彦さんが迎えてくれた。
まずは工場内を案内して頂く。様々な工程を経て丸太が製材に加工されていく様子を見学した。社員の方々はボリュームのある機械音と木屑が舞う中で黙々と作業をされていた。
見学後、事務所に通され瀬上さんの話を伺った。小一時間ほどの話は、まるで社会科の授業のようで勉強になることばかりだった。
みなさんは日本の木材自給率をご存知だろうか。日本全体では三割程度だが、森林率でみると実は世界第三位。木材資源は国内で十分賄える量がある。七割を、安価な輸入材に頼っているのが現状だ。
多くの方が北海道の樹木だと認識しているカラマツも元々は長野に生育していた樹種で、戦後炭鉱の坑木使用を目的に、北海道に植樹されたのだそうだ。工場内で加工されたカラマツの九割が物流資材として主に関東へ出荷され、住宅用に使われるのは僅か五%ほどだ。瀬上さんはこのカラマツを「地産地消したい」と真剣な眼差しで語る。
「ねじれのあるカラマツは、住宅用には向かない」と前置きしたうえで、「今ちょうどいい状態になっているカラマツで、住宅用の高価な製材を作りたい。山も間伐などの手入れをしてやらないと、元気にならないからね」。
そして瀬上さんは、こう続ける。「お客様から『カラマツを使って良かった』と言われたときが一番やりがいを感じるよ」。
瀬上さんは笑顔で締めくくった。
小学校の社会科見学や中学校の職場体験でオムニスを訪ねるといい学習になると感じた。
「うちは何の木で建てられているんだろう」。オムニスを後にし、ふと思った。
みなさんの住宅は、いかがだろうか?
国産? 輸入材? スギ? ヒノキ?
それとも、カラマツ?
取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:清水俊明
『幕別の“ 木の精 ”』
「製材は、生ものです。」
だから製品となる木材の品質チェックに、細心の注意を払う事を怠らない。
柔らかい口調ながらも、十勝産カラマツの有効利用について熱く語って頂いたのは、オムニス林産協同組合(幕別町字千住)代表理事の瀨上晃彦さん。
地域で育った木材を地域で消費する。地元の経済に寄与し、環境を守り、山を守る為に植林し、未来へつなげる。十勝産カラマツの有効利用により、循環型社会を目指し活動している企業である。
広い敷地には、無数の丸太が積み上げられ、木の心地よい香りが充満する。取り扱う原木は100%十勝産。そのうち90%がカラマツ、10%がトドマツ。隣接される瀨上製材所では、原木は様々な製品へと加工される。
カラマツ材は、物流資材のパレットに70%、梱包材に20%、建築用に5~6%が使用される。しかもその90%が関東方面へ出荷され消費されているという。
日本の木材自給率は30%(北海道は50%)。そのためオムニスでは地元での木材利用の推進にも力を注ぎ、近年ではカラマツ材を使用した住宅も造っている。
「カラマツ住宅を手掛けるようになり、地元で実際に住宅に住んで下さる方や工務店の方などから評価を直接聞けた時、喜びとやりがいを感じます」と語る。
北海道のカラマツ植林は、戦後長野から信州カラマツの苗木を植林した事から始まる。多くは、炭鉱の坑道の崩れを支える坑木として利用されていた。その後炭鉱の衰退と共にカラマツ材の用途も変化していったそうだ。
取材陣の様々な質問に深い知識で答えて下さる姿は、まさに木の生き字引。
「地元の山に、価格を還元できる様な仕組みを今考えている。カラマツ原木の価値が高まれば、山に植樹したり、整えてくれる人が増える。そんな値段にしたいんです。」
木々からのメッセージを伝える、まるで「木の精」のようだ。
「精」の意は、辞書によると『①くわしいこと。②精粋。③細かく巧みなこと。④気力。元気。⑤はげむ。⑥たましい。』とある。
まさに瀨上さんそのものだと思った。
取材を終えると、お土産としてカラマツ材のお箸を頂いた。
木の精は、「これで食べるとご飯がおいしいですよ」と、にこり。
早速、その日の夕飯で使用した。すべすべの触り心地。真っ直ぐな木目が美しい。先端の細さはご飯を掴みやすく、口触りも滑らか。十勝産のカラマツだと思うと一層おいしく感じられた。
地域の木々の循環に、僅かながら関われている。そう思える時間だった。
取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:橋本裕子
『カラマツの地産地消を目指して』
この日訪れた「オムニス林産協同組合」(以下、オムニス)の工場敷地内にはたくさんの原木が積み上げられていて、辺りには木の香りが漂っていた。この香りはどこかで嗅いだ匂いだと記憶を手繰り寄せてみると、実家近くにあったチップ工場の香りだと思い出し、なんだか懐かしい気持ちになった。
心地よい木の香りに包まれながら、代表理事の瀬上晃彦さんに工場を案内していただく。ちょうど、原木の製材中のようだ。オペレーターが機械を操作するたびに、皮を剥がれた角材がベルトコンベアーの上をすべるように流れていく。ガタンゴトンと大きな音を立てながら、巨大な原木が製材されていく様子は大迫力。(普段接しない環境に)思わず圧倒されてしまった。
オムニスに運ばれてくる原木は、ほぼ十勝管内のカラマツやトドマツ。うち7割が運輸会社などで使用されるパレット(木製の荷台)に加工される。あとの3割は梱包材や住宅建材、チップ、おがくずとなる。十勝産のカラマツはパレットのような消耗品として使われることが多く、住宅建材のように永く使われる製品になる割合はまだ少ない。
その大きな要因は、カラマツが持つ木材としての特徴にある。ねじれや割れが生じやすく、松ヤニが出やすいなど、住宅建材には不向きとされているのだ。パレットの需要が高いことも影響していると、瀬上さんから教えていただいた。
また、現在日本の木材自給率は北海道で約60%、日本全体でおよそ30%と、食糧自給率並みに輸入に頼っていることがわかる。国内にはまだまだ利用できる木があるはずなのに、山の管理が行き届かないために間伐も進まず、国内での消費が進まないというのが現状だ。住宅建築には安い輸入木材が多く使われるという事実も、カラマツが地元で消費されにくい要因の一つとなっている。
オムニスでは、ねじれや松ヤニが出ないよう加工の工程にある乾燥に工夫をこらし、製品としての品質を向上させた。それをもって十勝産カラマツの住宅建材としての良さをPRしたことで、住宅建材へのカラマツの使用が十勝管内で少しずつ増えているそうだ。そういった取り組みを通して木材の地産消費を進めていけば、日本全体の木材自給率も上がるのではないだろうか。その土地で生活する人がその土地で育った木を使用した家に住むことで、心地よく生活できるのではないかと思う。
「地元のお客様に喜ばれることが仕事のやりがい」と話した瀬上さんに、地元に根付いた仕事をすることの覚悟を感じた。
取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:豊田修子
『いつまでも木と共に紡ぐ暮らし』
敷地に入ると、一面に広がる丸太の山が目に飛び込んできた。なかなか見る事の出来ない光景に「わー」思わず感嘆の声があがる。
オムニスでは住宅用の木材の他に紙の原料になるチップも作っている。今、紙を使う機会が減ってきていると話す社長。「手紙、書かないですよね?」との問いに「書きます(笑)」と答えた私。書籍や新聞が次々と電子化される中、紙という媒体を失いたくないと切に思う。地元十勝の企業が出版している、北海道の魅力的な暮らしを伝える雑誌、スロウも紙から生まれている。木のある暮らし、紙のある日常を送ることができるのは当たり前のことではない。山を守ってくれている人の存在あってこそ。「50年、100年先を見据えた長期的な活動」と会社パンフレットには書かれていた。そうか、今の時代、長い目で物事を見るという視点が欠けているのかもしれない。物事に時間をかけること、物を使い捨てにせず、長く大事に使っていくという心が・・・。「この土地に生まれて大切に育てられ、地元の人の暮らしに役立っている事を誇りに思う。ここに生まれてよかった」。カラマツから、そんな声が聞こえた気がした。
「カラマツ住宅に住むお客様から、『この木材を使ってよかった』と感想を聞ける事がやりがい」。目の前でそう話す社長の姿には実感が込められていて、だから仕事を続けてこれたのだと思わせるほど、私の心に伝わってきた。
私が木を選ぶ基準って何だろう?今、外国産の安い木材に押され、国産の木の需要が減っていると言う。カラマツは成長が早く丈夫で、若いときはクリーム色、年数を経てなめ皮の様な色になるそうだ。事務所に設置された椅子も、カラマツで作った自社の作品。椅子には塗装されずともツヤリとした自然の光沢があった。
この記事が、これからマイホームを検討する際、資材に地元の木があることを知ってもらうきっかけとなったなら、うれしい。
取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:岡田陽江
『木のみらい、幕別(ここ)から。』
北海道内では60%。全国では27~28%。これが一体何を示す数字かすぐにわかる人はどのくらいいるでしょうか。
正解は「木材自給率」。前者が、北海道において道内産の木材がどれほど消費されているか、後者が国内産の木材が国内でどれほど消費されているかを示すものです。こうして数値にすると道内ではかなり木材の地産地消が出来ているように見えますが、国内全体で見るとそれほど消費できていないと言う事がわかります。
この現状に危機感を感じ、何とか現状を改善できないかと日々日本の木材供給のこれからを考え奮闘しているのが瀬上晃彦さん。瀬上さんはカラマツ製材の製造を主に行うオムニス林産協同組合及び有限会社瀬上製材所の代表理事を務めています。
瀬上さんの活動拠点である瀬上製材所は十勝・幕別町内に位置し、周囲を木々に囲まれた環境の中で道内のみならず全国各地に出荷されるカラマツ製材・チップの製造・販売を行っています。出荷された素材は製紙や住宅、パレット材などに活用され、私たちの生活に役立てられるものとなります。
瀬上製材所内で扱われる木材の9割はカラマツ、残りの1割はトドマツです。この二つの木は戦後道内に多く植林されたもので、製材所の周辺にも多く生息しています。瀬上さんはこのカラマツの価値を、今一度多くの人々に見直してほしいと考えています。
「カラマツは従来ねじれや収縮、割れなど変形する特徴を持つことから『住宅には不向きな木』とされてきました。ところが植林から40年近く経った頃から成熟してくるカラマツは、特徴的であったねじれが弱まり木自体の強度が増す傾向にあることがわかりました。色もクリーム色から赤みがかった見 栄えのいい色になるため、住宅向けの素材として評価され始めています。」
しかし冒頭でも述べたように現在日本国内での木材自給率は低く、国内で使用される木材の多くは海外からの輸入に頼っているのが現状。その理由は意外なところにありました。
「日本には木材に使える木が使っても使っても消費しきれない程豊富にあります。しかし日本の山は道が整っていないこともあって木材の運搬にとてつもなく費用がかかるため、その結果低コストで済む海外輸入に依存せざるを得ないのが現状です。」
私は近年の報道から「割り箸を使うと森林破壊につながる」、「森林伐採のせいで木材が不足している」そんなイメージを持っていました。しかしここで瀬上さんの話を伺ってそのイメージが大きな間違いであったことに気付くことが出来ました。
瀬上さんは木材自給率の向上を目指して「カラマツという木がある事を地域の人々に知ってもらう」ための活動に一層力を入れています。カラマツ等十勝で生産された木を利用した住宅建築を推進する「とかちの木で家をつくる会」に参加したり、カラマツから生まれた積木ブロック「からっく」をネット販売しているほか、地域の学校等の教育施設にも寄贈されているのだとか。
「国産の木を使おうという動きは全国的に始まりつつあります。不要な木を切っていかないと逆に山も木も育たなくなってしまう。その事実を知ってもらい、山を育てるという意識を持ってもらうためにも木の価値を見直してもらえたらと思っています」。
十勝のため、木や山のため、日本の林業のこれからのためを思いながら、瀬上さんは今日も、森の匂いに包まれた製材所で汗を流しています。
取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:小椋耶那