『幕別の“ 木の精 ”』
「製材は、生ものです。」
だから製品となる木材の品質チェックに、細心の注意を払う事を怠らない。
柔らかい口調ながらも、十勝産カラマツの有効利用について熱く語って頂いたのは、オムニス林産協同組合(幕別町字千住)代表理事の瀨上晃彦さん。
地域で育った木材を地域で消費する。地元の経済に寄与し、環境を守り、山を守る為に植林し、未来へつなげる。十勝産カラマツの有効利用により、循環型社会を目指し活動している企業である。
広い敷地には、無数の丸太が積み上げられ、木の心地よい香りが充満する。取り扱う原木は100%十勝産。そのうち90%がカラマツ、10%がトドマツ。隣接される瀨上製材所では、原木は様々な製品へと加工される。
カラマツ材は、物流資材のパレットに70%、梱包材に20%、建築用に5~6%が使用される。しかもその90%が関東方面へ出荷され消費されているという。
日本の木材自給率は30%(北海道は50%)。そのためオムニスでは地元での木材利用の推進にも力を注ぎ、近年ではカラマツ材を使用した住宅も造っている。
「カラマツ住宅を手掛けるようになり、地元で実際に住宅に住んで下さる方や工務店の方などから評価を直接聞けた時、喜びとやりがいを感じます」と語る。
北海道のカラマツ植林は、戦後長野から信州カラマツの苗木を植林した事から始まる。多くは、炭鉱の坑道の崩れを支える坑木として利用されていた。その後炭鉱の衰退と共にカラマツ材の用途も変化していったそうだ。
取材陣の様々な質問に深い知識で答えて下さる姿は、まさに木の生き字引。
「地元の山に、価格を還元できる様な仕組みを今考えている。カラマツ原木の価値が高まれば、山に植樹したり、整えてくれる人が増える。そんな値段にしたいんです。」
木々からのメッセージを伝える、まるで「木の精」のようだ。
「精」の意は、辞書によると『①くわしいこと。②精粋。③細かく巧みなこと。④気力。元気。⑤はげむ。⑥たましい。』とある。
まさに瀨上さんそのものだと思った。
取材を終えると、お土産としてカラマツ材のお箸を頂いた。
木の精は、「これで食べるとご飯がおいしいですよ」と、にこり。
早速、その日の夕飯で使用した。すべすべの触り心地。真っ直ぐな木目が美しい。先端の細さはご飯を掴みやすく、口触りも滑らか。十勝産のカラマツだと思うと一層おいしく感じられた。
地域の木々の循環に、僅かながら関われている。そう思える時間だった。
取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:橋本裕子