2024年 (令和6年)
5月5日(日)
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午後 6:00まで

 『カラマツの地産地消を目指して』

 この日訪れた「オムニス林産協同組合」(以下、オムニス)の工場敷地内にはたくさんの原木が積み上げられていて、辺りには木の香りが漂っていた。この香りはどこかで嗅いだ匂いだと記憶を手繰り寄せてみると、実家近くにあったチップ工場の香りだと思い出し、なんだか懐かしい気持ちになった。
 心地よい木の香りに包まれながら、代表理事の瀬上晃彦さんに工場を案内していただく。ちょうど、原木の製材中のようだ。オペレーターが機械を操作するたびに、皮を剥がれた角材がベルトコンベアーの上をすべるように流れていく。ガタンゴトンと大きな音を立てながら、巨大な原木が製材されていく様子は大迫力。(普段接しない環境に)思わず圧倒されてしまった。
editer sega 04 オムニスに運ばれてくる原木は、ほぼ十勝管内のカラマツやトドマツ。うち7割が運輸会社などで使用されるパレット(木製の荷台)に加工される。あとの3割は梱包材や住宅建材、チップ、おがくずとなる。十勝産のカラマツはパレットのような消耗品として使われることが多く、住宅建材のように永く使われる製品になる割合はまだ少ない。
 その大きな要因は、カラマツが持つ木材としての特徴にある。ねじれや割れが生じやすく、松ヤニが出やすいなど、住宅建材には不向きとされているのだ。パレットの需要が高いことも影響していると、瀬上さんから教えていただいた。
 また、現在日本の木材自給率は北海道で約60%、日本全体でおよそ30%と、食糧自給率並みに輸入に頼っていることがわかる。国内にはまだまだ利用できる木があるはずなのに、山の管理が行き届かないために間伐も進まず、国内での消費が進まないというのが現状だ。住宅建築には安い輸入木材が多く使われるという事実も、カラマツが地元で消費されにくい要因の一つとなっている。
editer sega 13 オムニスでは、ねじれや松ヤニが出ないよう加工の工程にある乾燥に工夫をこらし、製品としての品質を向上させた。それをもって十勝産カラマツの住宅建材としての良さをPRしたことで、住宅建材へのカラマツの使用が十勝管内で少しずつ増えているそうだ。そういった取り組みを通して木材の地産消費を進めていけば、日本全体の木材自給率も上がるのではないだろうか。その土地で生活する人がその土地で育った木を使用した家に住むことで、心地よく生活できるのではないかと思う。
 「地元のお客様に喜ばれることが仕事のやりがい」と話した瀬上さんに、地元に根付いた仕事をすることの覚悟を感じた。

取材先:オムニス林産協同組合
執筆者:豊田修子