2024年 (令和6年)
11月25日(月)
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午前10:00から
午後 6:00まで

『頼れる町の魚屋さん』

 個人商店に行くのは一体いつぶりだろうか? 学校指定の文具を買う必要がなくなってからは、さっぱり行くことがなくなった。
 「私の知っている魚屋さんと違う…」。
 まず店先に並んでいたのは、ネット入りのミカン類。ネット入りは久々に見たな、というかミカン? と不思議に思いつつ看板を見上げるが、そこにははっきりと「斉藤鮮魚店」の文字。今回取材にご協力いただいたのは、斉藤鮮魚店2代目・斉藤栄一さん。素人取材陣がまごついていると、自ら話題を提供して話をひろげてくれた。さすが接客歴60年を超えるプロ。editer saito 06 斉藤鮮魚店の始まりは昭和22年。現・北洋銀行駐車場にあった長屋に、初代店主である斉藤さんの母親が開いた店だ。長屋は夜になると星がよく見えるし、とても風通しのよい建物だったと斉藤さんは笑いながら語った。
 現在の店舗に移転したのは約60年前。前述のミカンのように、斉藤鮮魚店には魚屋らしからぬ品物がたくさん並んでいる。野菜に果物、カレールーやお菓子、そして洗剤やお肉。斉藤さんが手ずから揚げる天ぷらまで。こちらの天ぷら、なんと、天ぷら屋の店先で揚げている所を毎日見ていたら覚えてしまった、という一品。
 店内を見ていて気になったのは、とあるメモ。「中央保育所 おやつ見本 5月10日遠足」。見学にでも来るのかと尋ねてみると、保育所の遠足用におやつのセットをつくっているのだそうだ。十勝毎日新聞にも掲載されたことがあるが、斉藤さんは昭和46年から子ども会の活動を映像記録に残し続けてきた。このように、町を見守り支えてきたからこそ、斉藤鮮魚店には魚に限らず様々な注文が入るのだろう。editer saito 01 魚以外のことばかり書いてしまったが、もちろん鮮魚店というだけあって、スーパーではなかなか出会えない魚や自家製の干物など、おいしそうな魚介類が並んでいる。目の前で捌かれる魚を見て思わず「…おいしそう」とつぶやいてしまった。
 斉藤さんと会話をしながら、町のお店は店員との他愛ない会話が良いのだよな…と改めて思った。

取材先:斉藤鮮魚店
執筆者:野口綾香