2024年 (令和6年)
5月6日(月)
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『老舗鮮魚店を訪ねて』

 幕別町本町で昭和22年に創業した老舗鮮魚店。店主の斉藤栄一さんは、昭和11年生まれの78歳。奥さん、息子さんと共にお店に立つ。editer saito 07

 「昭和20年に樺太から家族8人で引き揚げて来たときは,、小学校3年生だった。食べるものや着るものがなく大変な時代だった。白いご飯が食べたくて、向かいの豆腐店の店先に並ぶおからがご飯に見えたね。自転車やそりで店の配達も手伝い、隣近所へ御用聞きにも行ったよ」と懐かしそうに話す。
 お店の創業時のことを尋ねると、「母親が、樺太で鮮魚店を開いていたこともあり、現在の幕別本町にある北洋銀行駐車場の5軒長屋で開店したんだよ。他には、飴屋や靴店もあって、冷蔵庫がない時代だったからムシロに魚を並べて売っていた。高校時代は、エンジニアになりたいという夢があったから、店を継ぎたくなかったんだけどね。8人兄弟の5番目で長男だったので、高校を卒業してからお店の仕事をするようになった。当時は周囲に亜麻工場や新田ベニヤ工場があって、景気も良く活気があり、魚屋も12軒あったんだけれど、今はうちだけになっちゃったね。最近は住民も少なくなって、お客さんとの会話や近所の人とのふれあいが減ったのが寂しい」と話してくれた。
 息子さんの剛さんは、現在52歳で昭和60年にお店を継いでいる。「最初は店の仕事はしたくなかったんだけれど、今はお客さんに魚のおろし方や煮つけの方法など、料理を教えるのが楽しいです。仕入れをしてそのままでは売れない時代なので、干物や総菜も作っているんですよ」と話す。店内にはカレイやニシンなどが並び、剛さんはカレイを手際よく刺身にしていて、おいしそうだった。editer saito 02 栄一さんの「これからも元気なうちは、仕事を続けていきたい、ものづくりは楽しい。孫が4代目を継いでくれるとうれしいね」という言葉が印象的だった。幕別町本町地区の老舗鮮魚店として、今後もお客さんとのふれあいを大事にしながら、新鮮でおいしい魚を販売し、魚食文化を伝えてほしい。栄一さんにはいつまでもお元気でいてほしいと思いながらお店をあとにした。

取材先:斉藤鮮魚店
執筆者:安達裕子