2024年 (令和6年)
5月4日(土)
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 『スーパーに並ばないこだわりのものを売る』 

 スーパーに並ばないようなこだわりのものを売る、地域に根差したお店がある。昭和ひと桁の時代から続く、幕別町の老舗、木川商店だ。
やっと春の兆しが感じられるようになった4月の上旬。木川商店を訪れると、萩原滋さん路代さん夫妻が、明るく出迎えてくれた。お店に入ってすぐに、各地の珍しいお酒がズラリと並んだ陳列棚が目に入る。それぞれのお酒には店主の思いが伝わるポップが貼られていて、一つひとつじっくり眺めてみたい思いに駆られた。お酒の他にも、幕別町のチーズ工房ニーズのピザやチーズ、音更町の宝永のギョーザなど、目をひくものがあったが、店内は、すっきりとしていて品数が少ないように見受けられた。
 木川商店は、創業当時、魚や野菜の行商をしていたという。昭和33年に有限会社を設立。平成15年くらいまでは、建物全体がスーパーとなっており、鮮魚や、お弁当、お惣菜を扱う厨房設備も整っていた。
 現在は、2つの会社を営む。ひとつは、木川商店として、主に酒、たばこ、食品を扱う会社。もうひとつは、タクトビルという警備会社だ。全く業種の異なる会社を経営していることに驚く。
 今回の取材では、主に木川商店についてお話を伺った。主にどんな商品を扱っているかと尋ねると、真っ先に、幕別町特産のインカのめざめというジャガイモを原料とした焼酎を見せてくれた。その名も「インカの目覚め」。editer kigawa 04

 通常の焼酎はサツマイモを原料にして作られるが、ジャガイモを原料としたこちらの焼酎は、クセがなく飲みやすい。リピーターも多いという。ご当地の焼酎でこんなに売れたのは珍しいという人気の高さ。幕別町のものを売っていきたいという店主の思いが強く伝わってきた。
ディスカウントショップとでは、最初から仕入れの価格が違う。「だから、スーパーに並ばないものを売っているんです」というお話と、店内に入った時の印象とが結びつき納得がいった。
 野菜なら、幕別町特産のニラやアスパラ。お米や魚にしても、品質にこだわったものしか扱わない。「何よりも、信用取引だから」と滋さんは言う。安心、安全、品質がモットー。1回も顔を見たことのない遠方のお客様も多いそうだ。昔からの常連さんは、商品の値段を聞かないということからも、木川商店とお客様との信頼関係の深さが感じられた。
 夫婦が今、力を入れていることのひとつに、自社で開発したコロッケがある。一昨年の暮れから、催事などでインカのめざめを使ったコロッケを販売していたが、それをさらに発展させたものだという。幕別町ならではのコロッケができないものかと考え、幕別町の特産であるインカのめざめに加え、ユリ根を使ったコロッケを考案。ゆり根のゆで加減が難しく、何度も試行錯誤を重ねて出来上がった。普通のジャガイモと違って、黄色い色が特徴のインカのめざめは、中に入っているユリ根が映える。現在(取材に伺ったのは4/12)商標登録申請中だそうだが、特別にこのコロッケの名前を教えていただいた。その名も「幻の黄金ユリ根コロッケ」。今年の10月に、東京ビジネスサミットへの出店も考えているという。
 人とのつながりを大切にする商いの原点を感じることができた今回の取材。滋さんが、アイデアを出して試食をし、奥さまの路代さんが調理を担当。「次は、長イモをコロッケにしたら…なんて、この人は言うんだけどね」と、路代さんが笑いながら話してくれた。夫婦仲睦まじく商品開発する様子を想像して、微笑ましい気持ちになった。
 「幕別町に特化したもの」を売ることにこだわり続ける木川商店。地域に根差したお店として、これからの一層の発展を願ってやまない。

取材先:木川商店
執筆者:福田真希