2024年 (令和6年)
5月4日(土)
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午前10:00から
午後 6:00まで

 4月12日(土)に開催した『エディター養成講座』。最終回は2つの班に分かれて、実際に幕別町内で頑張る商店に取材しました。
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斉藤鮮魚店のレポートはこちら


 『一番大切なこと』

 「やりがいはお客様の『おいしかったよ』を聞くことです」。
 そう笑顔で話してくれた萩原滋さんが専務を務める『木川商店』は、国道38号線から幕別本町方面に入ってすぐのところにある。主に酒や米などの食料品を販売する傍ら、町からの依頼業務で警備清掃業も営んでいる。 
 店を入ってすぐ目につくのが棚に陳列されたお酒だ。スーパーでは見かけない銘柄が多い。「毎年、札幌の展示会に行って味見をして決めています。自分が美味しいと思ったものでないとお客様に奨められないですからね」。今、力を入れているお酒は幕別産100%にこだわった焼酎『インカのめざめ』。サツマイモでつくったものよりスッキリとしていて飲みやすく、リピーターも多いそうだ。
「うちがスーパーと対抗するには品物で勝負するしかないですね。安心安全で、スーパーにないものを置くようにしています」。米は川崎米穀で精米した米だけ。水産物は広尾の鏑木水産のものだけというこだわり様。そのこだわりへの信頼から、品物も値段も聞かずに「~を送っておいて」と客に頼まれたり、顔も知らない道外の客が訪れることもあるそうだ。「うちは信用取引でやっています」と、滋さんは笑う。editer kigawa 05

 現在、試行錯誤の末に完成した幕別産100%にこだわった『幻の黄金ユリ根コロッケ』の販売を計画中だ。「売れれば地域の活性化にもつながる」と意気込む滋さんご夫妻。完成までの苦労話を聞いていると、つい食べたくなってしまった。
 こだわりだけでは信頼はつかめない。滋さんご夫妻の商売に対する真摯な姿勢が客の心をがっちりとつかんでいる。お二人の気さくな人柄も魅力だ。
 営業時間は9時から18時。日曜定休。一度足を運ばれてみてはいかがだろうか。きっと良品が見つかるはず。

取材先:木川商店
執筆者:清水俊明

 


 『仕事には人生が表れる』

 2つ会社名が書いてあるドアを開けると様々なお酒が出迎えてくれた。ようこそ木川商店へ。ペレットストーブの暖かさが、寒い中を歩いてきた身にはありがたい。私達の椅子の座り心地を気にかけてくれる木川商店のご夫婦。とても気の良い夫婦だ。

editer kigawa 03 木川商店で扱っているお酒の中でも、地元幕別産のじゃがいもを約1年熟成させた、すっきりした飲み口の焼酎「インカのめざめ」や同じく幕別の畑から穫れた黄金千貫(さつまいも)を使った「農業王国」が木川商店のいちおしだ。「この2つは『お偉いさんに持っていくから切らさないで』とお客さんに言われているんですよ」と笑う店主の滋さん。両方とも720mlサイズがあり、価格もお手ごろ。お試し用の小さなサイズもあるといいなとひそかに期待している。  
 ここで木川商店とっておきの手づくり商品を紹介したいと思う。その名も「幻の黄金ゆり根コロッケ」。幕別産インカのめざめ(じゃがいも)と忠類産ゆり根の運命の出逢い。コロッケの形を丸にするか俵型がいいか、芋とゆり根の割合や大きさを何度も試作し、ようやく完成した逸品である。   
 滋さんは、「自分は考え、食べる人。奥さんは作る人」とにやり。このコロッケの原料となる芋を見せてもらうと、「大きい」と周りからどよめきが…。コロッケになってしまえばわからない原料を拝見できたのは、うれしかった。今度はぜひ、食べてみたい。 木川商店では以前、生の魚を置いていたそうだ。「今は1本ままの魚を買う人は少ない」と言う。だから物事の全体を見られなかったり、魚は切り身で泳いでいると思う子どもを産んでしまうのかもしれない。 大量に仕入れて安く売ることができるスーパーには値段ではかなわない。価格より安心を、信頼できる商品や限定品、名前の知られていないものに力を入れているという滋さん。何度も足を運び販売の許可を得た「宝来のぎょうざ」は、表に旗を出してから一気に売れ始めたそうで、まさに一旗上げたのである。
 奥さんは「ぎょうざの広告を出した」と言い、滋さんは「出してない」と言う…そんな夫婦のかけ合いも楽しく、場の空気を和ませてくれた。 「納得のいかない商品は売らない」。仕事に対する滋さんの真摯な姿勢を信頼し、商品の値段を聞かないで買ってくれるお客さんもいるという。雑誌「和楽」の中で、千利休は「一度失敗したら終わり」というギリギリのところで生きていた人間」と評されていたことを思い出した。「一度信用を失くしたら注文は来ない」と言っていた滋さんの姿と重なった。
 何を選ぶか、今こそ私達消費者の眼が試される。発展途上国では、品物が不正に低い価格で取引されている現実がある。安く買える事はありがたいが安さの背景にある実態を知るべきではないか。その点、木川商店は全うな商品を生産している人、そして価格は高くともそれを買ってくれるお客さんとの繋がりを大切にしている。  
 今回の取材を終えて、私も木川商店と同じ思いを持って仕事をしていることに気づいた。「食」という字は人に良いと書く。その字の通り、食べることが人に良くあってほしい。そうではないことが多い現代にあって、木川商店はこの願いを叶えているように思う。
 「自分が出来る事をやっていけばいい」、「仕事には人生が表れる」。どんな時もブレない木川商店の芯の強さを見習いたいと思う。

取材先:木川商店
執筆者:岡田陽江 

 


 『スーパーに並ばないこだわりのものを売る』 

 スーパーに並ばないようなこだわりのものを売る、地域に根差したお店がある。昭和ひと桁の時代から続く、幕別町の老舗、木川商店だ。
やっと春の兆しが感じられるようになった4月の上旬。木川商店を訪れると、萩原滋さん路代さん夫妻が、明るく出迎えてくれた。お店に入ってすぐに、各地の珍しいお酒がズラリと並んだ陳列棚が目に入る。それぞれのお酒には店主の思いが伝わるポップが貼られていて、一つひとつじっくり眺めてみたい思いに駆られた。お酒の他にも、幕別町のチーズ工房ニーズのピザやチーズ、音更町の宝永のギョーザなど、目をひくものがあったが、店内は、すっきりとしていて品数が少ないように見受けられた。
 木川商店は、創業当時、魚や野菜の行商をしていたという。昭和33年に有限会社を設立。平成15年くらいまでは、建物全体がスーパーとなっており、鮮魚や、お弁当、お惣菜を扱う厨房設備も整っていた。
 現在は、2つの会社を営む。ひとつは、木川商店として、主に酒、たばこ、食品を扱う会社。もうひとつは、タクトビルという警備会社だ。全く業種の異なる会社を経営していることに驚く。
 今回の取材では、主に木川商店についてお話を伺った。主にどんな商品を扱っているかと尋ねると、真っ先に、幕別町特産のインカのめざめというジャガイモを原料とした焼酎を見せてくれた。その名も「インカの目覚め」。editer kigawa 04

 通常の焼酎はサツマイモを原料にして作られるが、ジャガイモを原料としたこちらの焼酎は、クセがなく飲みやすい。リピーターも多いという。ご当地の焼酎でこんなに売れたのは珍しいという人気の高さ。幕別町のものを売っていきたいという店主の思いが強く伝わってきた。
ディスカウントショップとでは、最初から仕入れの価格が違う。「だから、スーパーに並ばないものを売っているんです」というお話と、店内に入った時の印象とが結びつき納得がいった。
 野菜なら、幕別町特産のニラやアスパラ。お米や魚にしても、品質にこだわったものしか扱わない。「何よりも、信用取引だから」と滋さんは言う。安心、安全、品質がモットー。1回も顔を見たことのない遠方のお客様も多いそうだ。昔からの常連さんは、商品の値段を聞かないということからも、木川商店とお客様との信頼関係の深さが感じられた。
 夫婦が今、力を入れていることのひとつに、自社で開発したコロッケがある。一昨年の暮れから、催事などでインカのめざめを使ったコロッケを販売していたが、それをさらに発展させたものだという。幕別町ならではのコロッケができないものかと考え、幕別町の特産であるインカのめざめに加え、ユリ根を使ったコロッケを考案。ゆり根のゆで加減が難しく、何度も試行錯誤を重ねて出来上がった。普通のジャガイモと違って、黄色い色が特徴のインカのめざめは、中に入っているユリ根が映える。現在(取材に伺ったのは4/12)商標登録申請中だそうだが、特別にこのコロッケの名前を教えていただいた。その名も「幻の黄金ユリ根コロッケ」。今年の10月に、東京ビジネスサミットへの出店も考えているという。
 人とのつながりを大切にする商いの原点を感じることができた今回の取材。滋さんが、アイデアを出して試食をし、奥さまの路代さんが調理を担当。「次は、長イモをコロッケにしたら…なんて、この人は言うんだけどね」と、路代さんが笑いながら話してくれた。夫婦仲睦まじく商品開発する様子を想像して、微笑ましい気持ちになった。
 「幕別町に特化したもの」を売ることにこだわり続ける木川商店。地域に根差したお店として、これからの一層の発展を願ってやまない。

取材先:木川商店
執筆者:福田真希

 


 『幕別町の特産品を全国に発信している木川商店』

 国道38号線から幕別の市街に入ってきて最初の交差点の角に、木川商店はある。自動販売機とギョウザの旗があるが、お店やってるのかなーと、少しだけ不安になるほど静かな佇まい。けれど、店の扉をくぐると、店を切り盛りしているご夫婦の気さくな笑顔が出迎えてくれた。
 初代は、幕別町が止若(やむわっか)と呼ばれていた昭和初期に、富山県から入植して干物や野菜の行商をしていたそうだ。昭和32年には会社組織にし、今は木川商店ともう一つの会社を経営している。行商からスーパーになり惣菜や弁当を作っていたが、現在は店を小さくして、酒と米を中心に販売している。お話をしてくれた萩原さんは、木川商店の3代目に当たる方だ。

editer kigawa 01 創業から80数年が経つ木川商店。近年、「何か幕別町に関係するものを売りたい」と考えるようになった。そんな思いから、幕別産のアスパラやニラも販売している。「富良野のお姉さんのところに送って」と注文をくれる常連さん。「アスパラ送って」と電話をくれる、会ったこともない本州の人。品物も見ないし、値段も聞かないで注文されることもあるのだと、不思議そうながらも、嬉しそうに話してくれた。
いつもアスパラを知人に送っている常連さんの、こんなエピソードもある。その常連ランが、知人に別のスーパーのアスパラを送ったことがあるそうだ。ところが、「『いつものアスパラを送ってほしい。エンピツみたいなものが入っていたよ』と言われちゃってね」と苦笑しつつ、改めて木川商店に注文に来たという。木川商店のアスパラは3Lのものを扱っており、太くておいしい。なかなかこういう商品はないし、お客さんにも気に入ってもらっているそうだ。その品質の良さが伝わるエピソードだろう。
 味の良さはもちろん、安心、安全なものを販売しているが、「お客さんから信頼されていると思うと、間違ったものは絶対に売れない」と、萩原さんは熱く語ってくれた。傍らで奥様も、「おいしかったよ」と言われることが一番うれしいと話してくれた。
 最近は、幕別町の特産品を売りたいと考え、インカのめざめでコロッケを作って昨年イベントで揚げたてを販売し、とても好評だった。さらに忠類のユリ根を入れて試行錯誤しながら完成させたコロッケを、これから販売していこうと計画している。10月には、東京ビックサイトで幕別産のコロッケのPRをしてくる。
 「僕は考える人、妻は作る人、僕は食べる人」と二人三脚で開発したというコロッケ。商品の開発は初めてだったそうだが、これからもできることを考えて、幕別町に貢献したいと話していた。取材を終えてすっかり木川商店のファンになった。手作りコロッケはおいしかった。3Lのアスパラを食べてみたい。おいしいお酒も飲みたい。と私の欲望(笑)は膨らんでいる。

取材先:木川商店
執筆者:楠美智子