ジャンル分類と50音順の並べ方だけだと、本が孤独に見えることがあります。本を文脈でつないでみると、本と本がつながって、違う表情が見えてきます。なぜ、三冊かというと・・・
井上ひさしは「ニホン語日記」にこう書いています。『混沌たる時の流れを過去・現在・未来と三つに区切ると、時間が辛うじて秩序だったものになる。鮨屋の主人は自店のにぎりを「松・竹・梅」 に分け、鰻屋の亭主は自店の鰻丼を「特上・上・並」の三つに分けて、店の売り物のすべてを表す。混然としたものを一つで言ってはわけがわからない。二つで言っても据わりがわるい。三つに区分して言うと突然、構造が安定し、混然としたものの正体が見えてくる』
本と本 本はつながる。
本と人 本とつながる。
人と人 本でつながる。
さあ、「三冊堂」!開店のお時間です。
先代(祖母)の後を継ぎ、鎌倉で代書屋『ツバキ文具店』を営む雨宮鳩子さん(鳩子さんだからポッポさん)。ポッポさんの元には、今日も風変わりな代筆の依頼が舞い込みます。お悔やみ状や、離婚の報告、天国からのお手紙、ラブレターに、絶縁状・・・。依頼主の心情に添って、精魂込めて書き上げる代筆のお手紙。ディテール細かく描写された便箋やインクなどの文具にも魅了されます。
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町の小さなどら焼き店に働き口を求めてやってきたのは、徳江という名の高齢の女性でした。徳江のつくる「あん」は評判になり店は繁盛し始めます。しかし、急に客足が遠のきます。徳江がいることが理由らしいのです…。 徳江の作るあんは、どうして美味しいのか?『あん』で、壮絶な人生を経てきた徳江が未来ある者たちに伝えようとした「生きる意味」は、涙なしに読むことはできません。
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日本文学者・万葉学者である著者が、物質の発達によって日本人がどこかに忘れた「心のゆたかさ」について考察する『日本人の忘れもの』。日本人が古くから培ってきた人間関係の在り方は、相手に生かされる道を探ることであり、まことに正しい実りに向かう、事のなりゆき=なりゆきに身を任せることが本来の日本人の生き方だったのだとか。「生かされて生きる」とは、他人に全てを委ねるのではなく、他人を信頼し、自分の努力をつくしたうえで他人に頼ること。つまり、人間関係に自分の力を尽くすことが必要で、そのうえで、関係の自然な流れのなかに生きていくことができるのだそう。
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