2024年 (令和6年)
4月27日(土)
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 詩人・童話作家として知られる宮澤賢治は、家業の質屋を継ぐべき長男として生まれましたが、優秀だったことから学問の道に進みます。しかし、家業を嫌いながらも理想を求める世間知らずなところがあり、なかなか自立できません。勤勉で優秀な商人であり、熱心な篤志家でもあった父・政次郎は、この息子にどう接するべきか苦悩します。そんな賢治も、妹の死をきっかけに創作に情熱を注ぐようになり、やがて独り立ちしてゆきます…2017年に直木賞を受賞した『銀河鉄道の父』は、紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を父・政次郎の視点から描いた心温まる一冊です。

 1995年3月、日本戦後史上、最も凶悪な事件とされる「地下鉄サリン事件」が発生しました。事件を起こした「オウム真理教」と首謀者とされる「教祖・麻原彰晃」は、平成を生きた人間には忘れられない存在となりました。『止まった時計』は、一時、父・麻原の後継者としてメディアを賑わせた三女”アーチャリー”が記した手記です。三女の目線から見た麻原とその家族、オウム真理教と教団幹部、弟子の歩みと変貌ぶりが、麻原の子として生まれ、厳しい社会の現実と苦闘した、自身の半生とともに綴られています。

 あの男は正直で、真っ直ぐであった。素顔だった…太宰文学の最高峰「斜陽」のモデルである太田静子と太宰治の間に生まれ、父と会うこともなく未婚の母に育てられた著者が、母・静子の目線から、父として男としての太宰の実像を描いた『明るい方へ』。自らの文学に殉じて、自らの意志で死んでいった太宰治ですが、本書では、何よりも文学を優先させたことから、深い業を背負ったその人生が描かれています。常に死を見つめていた、作家・太宰治の人としてのあるがままを知ることのできる一冊です。 MCL編集部(吾)

三冊堂394(2019/04/04)