“さんかく”な関係

　大企業の受付嬢として働く美雨は29歳の誕生日とともに、退職まであと一年のタイムリミットを迎える。そんな中出会った漫才コンビ“安全ピン”の亨と弓彦。恋なのか、友情なのか。歪で複雑な３人の関係が心地よくも、切ない。切ないのに、ずっとこのままの３人でいてほしいと願ってしまう。大阪が舞台の笑い泣きする物語『パラソルでパラシュート』。

　京都の町家で、個人でデザインの仕事をする高村さんと、以前高村さんと同じバイト先で働いていた伊東くん。そして、京都の大学で、解剖動物を研究する伊東くんの彼女の華ちゃん。料理好きの高村さんがつくる塩むすびのような角のまるいゆるっとした『さんかく』な関係の３人。日々の暮らしを丁寧に過ごし、食べることを大切にする高村さんと、食事を摂る時間さえもったいないと考える華ちゃんが対照的に描かれているのが印象深い物語。
　お惣菜と珈琲のお店“△”を営むヒロは、晴太と中学３年生の蒼のきょうだい３人で暮らしている。ポテサラ、ハニーマスタード味のチキンに、根菜サラダ…。ご飯に合いそうなおかず達がショーケースに並ぶ。ヒロ達きょうだいが、“さんかく”な訳とは。美味しそうな料理とは裏腹に複雑な事情を抱えた３人に胸がいたむ。“つぎはぎ、さんかく”じゃなくて、『つぎはぐ、さんかく』な関係の３人の進む道を見守っていたくなる物語。　ＭＣＬ編集部（ふ）

三冊堂635（2023/11/23）