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75歳にして生き方の方針を変えた著者が、日々思うこと、実践していることをありのままに綴った『75歳、油揚がある』。5年前の著作『70歳、これからは湯豆腐』では、これからはいろいろなことにこだわらず、淡白な人生を送るとしていましたが、5年の月日を経て、深く、濃く、しっかりと噛みしめた人生を過ごすという境地に至っています。棚から溢れるレコードやCDから、これは本当に素晴らしいと思う音楽に耳を傾ける。名画は二度、三度、四度見て深める。好きな町に通い、一杯かたむけながらその町が好きな理由を考える。自分が積み重ね身につけてきたものをすくい取ると、一本の糸に繋がっていくような気がします。
著者が、自分が三流であることを認めてしまいましょう!というセルフ・カミングアウトをすすめる『三流のすすめ』。三流の本来の意味は、「いろいろなことをする人」なのだそうです。一つのことに満足できず、いろいろなことに手を出すため、一つのことがなかなかものにならない。三流人の生き方は、ぐるぐると回っていって、どんな人生になるか分からない「螺旋的な生き方」であり、目標がないので途中で挫折することがない。本書の数々の三流のすすめに、なるほど!と膝を打ち、安堵の息をもらすのは小生ばかりではないはず。
人類と花粉との出会いは愛に満ちたものだと語る『花粉症と人類』。人類が花粉の存在をはっきりと目で見て認識したのは、1671年。その後、花粉研究が進み生物学的な意義が明らかにされるにつれ、人々が花粉を賛美するようになったという解説には驚きです。スギ花粉の全滅を志し研究に取り組み始め、やがて花粉の魅力に取りつかれという著者のひたむきな思いを本書の端々に感じます。 MCL編集部(そ)
三冊堂636(2023/11/30)