無事に続きました表紙つながり!今回は独特なタッチが印象的な宇野亞喜良氏のイラストを堪能できる作品を集めてみました。まずは、女性のイラストが目を引く大人向け絵本『X字架』です。この”X”はローマ数字の10を表していて”じゅうじか”と読みます。曜日になぞらえながらシンプルな文章で進んでいく2人の関係に見え隠れする怪しい気配・・・日曜日に2人が行き着く先はタイトルに”なるほど、だからね”と思わせてくれます。
『五色の舟』は、一昔前にあった見世物小屋、フリークスショーといわれた場所で生きる人たちを題材にしたお話です。戦争で世間が欝々といている時代、己の身体的特徴を活かした見世物をして日銭を稼ぎながら暮らしている血の繋がらない5人の家族がいました。ある日、牛の体に人の顔をもつ〈くだん〉が生まれたという話を聞きつけ仲間にしたいと現地に向かうものの、軍に先を越されてしまいます。しかし、その日から和郎と桜は毎晩奇妙な夢を見るようになりました。同じ内容の夢が50回目を迎えようとした時、一家は軍の施設で〈くだん〉と対面し夢の真実を知ることとなります。物語の怪しさを存分に感じさせてくれる宇野氏のイラストと、同時に掲載されている英文は作者の強い希望で実現したものだそうです。
大人向けの作品が多いと感じられる宇野氏ですが、この『ルイの冒険』は親子で楽しめる作品となっています。お母さん猫のもとで子猫のルイとココとジタンは3匹仲良く暮らしていました。ある日ルイは遊んでいるうちに眠ってしまい、気が付くと見知らぬ場所にいました。大好きなお母さんのところへ帰るため、見知らぬ森を進む中でルイはたくさんの〈初めて〉に出会います。印象的なイラストで進んでいく大冒険を優しい気持ちで見守りたいお話となっています。 MCL編集部(有)
三冊堂610(2023/06/01)