2024年 (令和6年)
5月7日(火)
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 詩人の茨木のり子の生涯、生み出された作品とその背景を詳らかに紹介する『茨木のり子 自分の感受性くらい』。代表作の「倚りかからず」をはじめとした数々の詩とともに、茨木のり子の評伝や錚々たる著名人によるエッセイが掲載された、「茨木のり子読本」と言える一冊です。-その人の気圧のなかでしか 生きられぬ言葉がある(文中より引用)-。彼女の凛としたコトバは、どんな時も、どんな状況でも胸を打ちます。冒頭にある詩人・谷川俊太郎の茨木のり子へのメッセージには、とにかく心が揺すぶられます。

 谷川俊太郎が茨木のり子へ捧げた追悼の詩。それが綴られているのは、哀悼詩集の『悼む詩』。-書いたものの中にだけ あなたがいるわけではないと 茨木さん そう言いたいんです今は(文中より引用)-。悲しさの中でも奮い立とうする心を、短いコトバから感じ取ります。茨木のり子のほか、寺山修司や河合隼男、ジョン・コルトレーンをはじめ、ゆかりある33人へ捧げた詩が書き下ろされている本書。詩の雰囲気が一人一人異なっていることに震えます。
 茨木のり子をして「精神の貴族」と称されたのは、詩人・山之口貘。彼の詩を子どもから大人まで親しむができる『日本語を味わう名詩入門14 山之口貘』。月見草をパパみたいな奴という娘のミミコが登場する詩は、あたたかな気持ちになり、故郷の沖縄をテーマにした詩は、選ばれたコトバに胸が締め付けられながらも、心にスッと染み込んでくる不思議さがあります。本書では詩の一つ一つに編者の解説が付されていて、コトバの迷子にならない安心感があります。 MCL編集部(そ)

三冊堂588(2022/12/29)