2024年 (令和6年)
4月25日(木)
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午前10:00から
午後 6:00まで

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 高校卒業後、東京のアパレルショップで働いていた都は、母の病気の看病のため、実家に戻り、地元のショッピングモールのアパレルショップで働き始める。都は、勤め先のショッピングモールで回転寿司屋に勤めていた貫一と出会い、付き合い始めるのだが…。仕事、家族、恋愛…将来のことを考え思い悩む30代。これでいいのだろうか。自分と他人を比較して、友人を妬ましく感じたり、将来のことを考え焦ったり。答えの出ないところを、ぐるぐると、ぐるぐると『自転しながら公転する』日々。悩みながら、泣きながら、一歩ずつ前に進もうとする都の行く末を祈り、一気に読み終えた一冊。

 父の再婚で、新しい母・瞳子さんと弟の晴彦と暮らすことになった高校1年生のちぐさ。ある日、晴彦がブラジャーを着けているところを見てしまい…。好きなものは好きと、毅然とふるまう晴彦に対して、輪から外れることを怖がり、相手にあわせてばかりのちぐさ。普通ってなんだろう?大人でもなく、子どもでもない年頃の心の葛藤がぐるぐると描かれる『ブラザーズ・ブラジャー』。甘酸っぱくて、苦しくて、瑞々しさにあふれた氷室冴子文学賞大賞受賞作。台湾出身のイラストレーター・SAITEMISSさんの装画も素敵です。
 高校1年の夏、突然身体が入れ替わってしまった陸とまなみ。性別、友達、家族…。突然与えられたこの境遇をどう生きていくか。物語は、終始〈まなみ〉の身体に入った〈陸〉の視点で語られる。いつ戻ってもいいように、〈まなみ〉であろうとする〈陸〉。だが、もとに戻る日は訪れない。もとに戻れる日を待つよりも、新たな人生を踏み出すべきか。進路選択、結婚、出産と、〈陸〉は、〈まなみ〉の身体を通して、人生の転機を経験していく。男女の入れ替わりを描いたフィクションだけれど、“違和感”や“生きにくさ”を抱えて生きていくことについても考えさせられる『君の顔では泣けない』。タイトルも秀逸です。 MCL編集部(ふ)

三冊堂572(2022/09/08)