2024年 (令和6年)
4月20日(土)
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午前10:00から
午後 6:00まで

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 幼い頃から強烈すぎる母親から逃れるように、もがき苦しんできた主人公・夏帆。著者自身が長年抱えてきた実の母親への複雑な思いや葛藤を描く『放蕩記』。許せないとしながらも、常に母親のことを意識してしまう屈折した母娘の関係が描かれる。著者の半自伝小説。

 主人公・千鶴が元夫のDVから逃れるためにむかった「さざめきハイツ」。そこには、幼少の時に、自分を捨てた母がいた。母・聖子は、若年性認知症を発症していて・・・。聖子の進行していく病気と薄れゆく記憶。逃れられない母娘の連鎖のようなものを感じ、苦しくなる。普通の母娘の関係を築けなかった女性たちの物語『星を掬う』
 精神科医で、長年親子関係を見つめてきた著者の『母という病』。うつや、依存症、摂食障害、引きこもり・・・。それらの精神的な問題は、根底に母親との関係が存在するケースが多いという。愛情という名の支配下に子どもをおいてはいないだろうか。子どもがのびのびと育てる環境にあっただろうか・・・。本書を読みながら、自分自身の子育てについて振り返る。「百点ではなく五十点で満足する。五十点で満足すると、人生はずっと楽になる。六十点だったら、上出来」と言う著者の言葉に、肩の力がスッと抜けていくのを感じる。完璧じゃなくていい。子どもも親も。 MCL編集部(ふ)

三冊堂563(2022/07/07)