2024年 (令和6年)
11月24日(日)
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午前10:00から
午後 6:00まで

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 ―月の出の間もない夜更けである。暗さが弛ゆるんで、また宵が来たようなうら懐かしい気持ちをさせる。― 出だしからうっとりするは、岡本かの子の『夏の夜の夢』。帰りにベーカリーで食べたアイスクリームのバニラの香りで寝つけなくなった歳子は、夜の散歩で牧瀬という青年と出会い夢のような一夜を過ごす。アイスクリームの香りで眠れない、半人半獣のような健やかな感触が夜気に伝ってきたなど、メタファの宝石箱のような物語が耳で読む(聴く)オーディオブックで登場。家事の合間に、ベッドの傍らに、いつでも楽しむことができます。

 1970(昭和45)年に開催した日本万国博覧会のシンボルとして創られ、2018年に再生された「太陽の塔」。2008年刊行のものを全面改訂した『岡本太郎と太陽の塔』では、新たに発見された史料や最新情報をもとに太陽の塔が解説されています。多種多様の資料と写真にほんのり当時の空気感を味わうことができるとともに、再生した太陽の塔を見たいという欲求に駆られること必須。太陽の塔と岡本太郎を愛する全ての人に向け作られたというのがなるほど頷けます。同書の姉妹書とされている、太陽の塔とテーマ館の建設に携わった7人の関係者を取材しまとめたノンフィクション「太陽の塔(2018)」も、別の角度から太陽の塔を知ることができます。
 人間の純粋な”憤り”こそ、世界に体当たりする情熱だと岡本太郎は言います。見極めつくし本質まで迫った怒りは、自分のスケールから離れて、透明になるのだとか。そういったものを「美しい怒り」というのかもしれません。岡本太郎の以前の著作を再編した『美しく怒れ』。養女として岡本太郎を支えた岡本敏子による「太郎の眼」が収録されています。家族、女性、人生の師など、多様なフィルターを通した岡本太郎の姿が浮かび上がります。 MCL編集部(そ)

三冊堂402(2019/05/30