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― 咳をしても一人 ―。わずか九字で胸が締め付けられるような孤独感を表現するのは、種田山頭火と並び称される自由律俳句の俳人、尾崎放哉。「愛する」をテーマに、思春期の心に伝えたい名詩を集めた『大人になるまでに読みたい15歳の詩①愛する』の中では、孤独の深淵に身を投じた尾崎放哉の美しく、情緒的な別れの場面を詠んだ一句が収められています。
心がつながった相手と信頼に満ちた家庭を築くのが真の人生と信じる男。出会って別れるまでの短い関わりの中に生まれるわずかなものが大切だと思う女。孤独を身にまとう三人の登場人物の視点から描く、孤独をテーマにした『孤独の歌声』。カテゴリはサイコホラー及びサスペンスですが、人の内面をのぞき込むような感覚にもなる、突き刺さる物語です。
「月舟町」の十字路の角にある無口な店主が営む「つむじ風食堂」は、イルクーツクに行きたい果物屋主人、背の高い舞台女優・奈々津さんなど、食堂も集まるお客もちょっと風変り。集う人々の控えめであたたかな交わりが懐かしい気持ちにさせ、ほっとするような柔らかな空気に身が包まれるようです。不思議な世界観を味わうのが楽しい『つむじ風食堂の夜』。一人でいることが孤独なのではなく、自分を、相手を理解しあえないもどかしさが孤独ということなのかもしれません。 MCL編集部(そ)
三冊堂382 (2019/1/10)