「鏡よ、鏡、この世で一番美しいのは誰?」。鏡は決まって、こう答えます。「一番美しいのは、お妃様、あなたです」。ところが、ある夜、いつものように鏡に向かって、お妃が尋ねると、「お妃様よりも、白雪姫の方が美しい」と…。この言葉を聞いたお妃は、怒り狂い、おばあさんの格好をして、白雪姫に毒リンゴを食べさせるのです。リンゴをひとくちかじった途端、死んだように倒れてしまった白雪姫は…。誰もが知っているグリム童話のお話『しらゆきひめ』。自分よりも美しい人がこの世にいることが許せないお妃。「美」への執念は、本当に恐ろしいと感じます。鏡は、そんな醜い心も映し出してしまうのかもしれませんね。
際限なく続く「美」への欲望によって狂わされていく女性たちを描いた『テティスの逆鱗』。女優、ワーキングマザー、キャバクラ嬢、資産家令嬢。同じ美容クリニックに通いつめる4人の女性たちが体にメスを入れるたびに、心が壊れていくさまが描かれています。彼女たちの心の裏側にあるものは、それぞれ複雑で…。ついには、踏み越えてはいけない領域まで近づいてしまいます。フィクションだけれど、こんなことが現実に起こったりして…と、背筋が凍るような気持ちになる物語です。
“醜形恐怖”とは、自分の外見・容姿について、他人には気にならないわずかな欠点にまで、とらわれてしまう精神疾患のこと。具体的な症例を紹介しながら、醜形恐怖について解説する『自分の顔が嫌いですか?』。醜形恐怖は、現代的な病理の現れ。近年では、以前よりも美容整形が手軽になったことにより、醜形恐怖の実態が見えにくくなっているようです。「美」を売りにした情報が氾濫する現代において、深刻な問題であると感じずにはいられません。 MCL編集部(ふ)
三冊堂356 (2018/07/12)