2024年 (令和6年)
11月23日(土)
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 日本文学者・万葉学者である著者が、物質の発達によって日本人がどこかに忘れた「心のゆたかさ」について考察する『日本人の忘れもの』。日本人が古くから培ってきた人間関係の在り方は、相手に生かされる道を探ることであり、まことに正しい実りに向かう、事のなりゆき=なりゆきに身を任せることが本来の日本人の生き方だったのだとか。「生かされて生きる」とは、他人に全てを委ねるのではなく、他人を信頼し、自分の努力をつくしたうえで他人に頼ること。つまり、人間関係に自分の力を尽くすことが必要で、そのうえで、関係の自然な流れのなかに生きていくことができるのだそう。

 政治的条件や利害などの様々な条件が錯綜しからみあい、かつ、人間を狭くする国民意識が加わって起きる戦争を汚いものとする著者は、そこには人間的、本質的問題が介入していないと述べています。そのために滅びてもかまわないというくらいの精神的な闘いをすべきで、しかしながら、現代人は精神を失っていて、それが人間を墜落させているのだとか。今、最も必要なのは精神の「蓄え」との力説に頷ける『自分の運命に楯を突け』
 思いもかけない偶然から、まったく別の新しい発見が導かれる。科学者の間では、こういった行きがけの駄賃のように生まれる発見、発明をセレンディピティと呼んでいます。探している時には見つからず、探していない時にひょっこり見つかるという現象も、一種のセレンディピティなのだとか。考え事をしていてテーマができたとしても、それを正視し続けると思考の自由な動きの妨げになる。一旦、中心ではなくその周辺におくことで、目的の課題をセレンディピティを起こしやすい文脈、状況におくようになり、そういった人間の無意識の作用がときには極めて重要なのだそうです。考えること、思考を育てる大切さについて語るロングセラー『思考の整理学』。大なり小なり、信頼関係の上で生きていきたいものです。 MCL編集部(そ)

三冊堂284 (2017/02/23)