宮下一家が十勝のトムラウシに山村留学していた一年間を綴ったエッセイ。北海道を愛する夫の一言で決まった山村留学。3人の子ども達が反対するかと思いきや、「面白そう」と目を輝かせる。テレビ難視聴地域で、最寄りのスーパーまで三十七キロ。そんな中で、お年頃の子ども達が、毎日を生き生きと過ごす姿が印象的。宮下一家を迎え入れてくれた地域の人々や、学校の先生たちとの交流がとてもとても温かい。十勝・大雪山国立公園にあるトムラウシは、アイヌの言葉で、「カムイミンタラ(『神さまたちの遊ぶ庭』)と呼ばれるほどに、素晴らしい景色に恵まれた土地である。また、ヒグマのよく出る土地という意味もある。自然の美しさと厳しさを直に感じる土地での宮下家の一年間は、山の緑のように濃くて、満天の星空のようにキラキラしていた。
映像作家でありながら、アイヌ語研究にも力を注いだ片山龍峯が、アイヌ民族最後の狩人・姉崎等に取材した膨大な量のインタビューを聞き書き形式にまとめた『クマにあったらどうするか』。長年クマを見続けてきた経験から導き出した超実践的クマ対処法。「クマは私の師匠です」と語った姉崎さん。クマの心を知らないと、クマ撃ちにはなれないという。姉崎さんの徹底した観察と実証経験から、驚くべきクマの本当の姿を知ることができる。アイヌに伝わるクマ撃ちの伝統を伝える貴重な一冊。
狩猟民族のアイヌは、ヒグマを「キムンカムイ(山の神様)」として尊敬し、問題を起こすクマを「ウェンカムイ(悪い神)」と呼んで、別に扱い、共生してきたそうである。前述の本にもあるが、クマの方が人間に遠慮して暮らしてきたのだという。大切なことは、キムンカムイをウェンカムイにしてはいけないということ。野生のクマに対して、私たち人間は、野生のルールを守らなければならない。山にゴミや食べ物を捨てることは、絶対にしてはいけないことである。人間が必ず守るべき約束事や、クマの行動や習性などの基礎知識、ヒグマに遭遇した自己分析などを豊富な写真でわかりやすく解説する『よいクマわるいクマ』。 MCL編集部(ふ)
三冊堂245 (2016/05/26)