2024年 (令和6年)
11月23日(土)
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実の親が特別な事情で育てられない6歳未満の子どもを養親が引き取り、法的にも実の親子関係が成立する「特別養子縁組制度」が日本で導入されたのは1987(昭和62)年(施行は1988(昭和63)年)です。この制度の、子どもと、子どもを育てたい夫婦を結びつけるボランティアで、産婦人科医である著者が、17年続けてきた活動の中で出会った絆のかたちの物語が『その子をください。』です。まだ高校生だったり、結婚詐欺にあったり、既婚者であっても経済的に苦しいなどの理由で養子に出すことを望む生みの親。「本当の親子なんだけど、血がつながっていないだけなんです」「血のつながりはなくても愛し合うことを決めたら家族です。」と語る育ての親たち。著者たちの尽力によって家族となった方々の姿に胸が熱くなります。

 「生んでくれたお父さんとお母さんは、あなたにお誕生日をくれました。そして今いっしょにいるお父さんとお母さんはあなたのことが大好きで、あなたと一緒に暮らしたいと、とてもとても望みました。だからあなたはとてもラッキーなんです。」養子になったことをラッキーなことだと伝え、では、大好きなのになぜ親は怒るの?どうやって家族になったの?産んでくれた親を覚えていなくてもいいの?養子だということはどういう意味なの?と、養子の子どもに養親が「自分たちは血のつながりがない親子である」ことを伝える、いわゆる「真実告知」の絵本です。『どうして私は養子になったの?』の原本は、アメリカで1978年に出版されたものということです。訳者は、養子に限らず多くの方に読んでもらい、生まれた家庭で生活できない子どもたちへの理解が深まることを期待しているそうです。
 少し体が弱ってきたので、働き手になる男の子を引き取ることにしたグリン・ゲイブルズ(緑の切妻)のマシュウとマリラの老兄妹。ちょっとした手違いから、駅でマシュウの迎えを待っていたのは赤毛でやせっぽちの女の子アンでした。初めは迷惑がった2人も、明るいアンを愛するようになり、アンは夢のように美しく移り変わるカナダの大自然の中で、少女から乙女へと成長してゆきます。グリン・ゲイブルズの2人がアンを引き取る決心をするまでは、アンの気持ちになると本当にドキドキします。小学校時代に読んだ『赤毛のアン』は、今思えば、血はつながっていなくても、お互いを思いあって一緒に暮らすことで素敵な家族になれるということを教えてくれた1冊だったと思います。他の方の訳や新装版も出ていますが、今回ご紹介するのは、NHKの朝ドラ「花子とあん」で脚光を浴びた村岡花子の訳です。 MCL編集部(紀)

三冊堂234号 (2016/03/10)