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せり なずな おぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ これぞ七草。七草を食べるとお正月もそろそろ終わり。七草はおせち料理で疲れた胃を休めるためとも言われていますが、日常に戻っていくための儀式のようにも思えます。植物学者である著者が、植物にまつわる多彩なエピソードを綴った『私の植物散歩』。春の七草はもとより、夏と秋のそれについても触れています。例えば、ハコベラは緑の草むらのなかに、白い星型の花を満天に星をちりばめたように点々と咲かせるなど、植物の一つ一つの描写は、さながら童話を読んでいるような心地良さに包まれます。
柄杓の形として知られる北斗七星。古代のローマ人は七頭の雄牛が大空の牧場を悠々と歩む景色として仰ぎ見ていたなど、その土地によって異なるものに見立てられています。太陽や月、星にかかわる伝承を世界中から集めた『世界の太陽と月と星の民話』。同じ太陽・月・星でも、民族の違いや住む土地の気象条件によって抱くイメージはさまざまで、そこから生まれる物語もまた、多様であるのが興味深さを覚えます。
歌舞伎で、一人の踊り手が早替りで次々と異なる役柄に扮して踊るのを「七変化」といい、さまざまな役を踊り分けるのは役者の腕の見せどころ。そのスピード感とは反対に、一見無駄に見える細部を仰々しくやけに時間をかけ、その間のほんの数分、劇場中が息をのんでじっとみているのも歌舞伎の面白さなのだとか。”芝居を豊かにしてきた煙草や酒などは単なる小道具ではなく伝統文化である”と述べる著者の、嗜好品からみた歌舞伎案内『煙管の芸談』。 MCL編集部(そ)
三冊堂225号 (2016/1/7)