2024年 (令和6年)
5月11日(土)
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 世界には衣食住のままならない子ども達が4億人いる。作家・石井光太の『みんなのチャンス』。世界の子ども達と日本の子ども達の写真の対比によって、日本の子ども達がいかに恵まれているか気づかされる。「恵まれている」=「幸せ」とは一概に言うことはできない。けれど、著者の言う通り、日本の子ども達には“より多くのチャンス”があると言える。そのチャンスをどう活かすのかは自分次第。子どもだけではなく、私達大人も、当たり前と過ごしている日常が、当たり前ではないことを忘れてはいけないと改めて感じる。

 『子ども兵士』とは、何らかの武力紛争に巻き込まれ、戦闘員または準戦闘員として、何らかの戦闘行為に関わっている18歳未満の子ども達のことを言う。現地からの衝撃的なレポートからは目を背けたくなるような現実をつきつけられる。あまりにも多くの子ども達が、いのちを軽視され、大人たちの戦争や紛争の犠牲になっているという現実。本書では、日本にいると知ることが難しい世界の子ども達の現状を伝えるばかりではなく、私達日本人にできることを具体的に指し示す。
 子ども兵士の問題は、児童労働の問題と共通点が多い。チョコレートの原料となるカカオ豆の生産地では、たくさんの子ども達が過酷な労働を強いられている。国際条約で禁止されているにも関わらず、カカオ農園で働かされる子ども達。本書では、ガーナのカカオ生産地域での現状と、子ども達を児童労働から守るための日本とガーナの取り組みを紹介する。児童労働は、子どもが教育を受ける妨げとなる。チョコレートを楽しむ先進国の消費者のために、チョコレートを食べたことのない発展途上国の生産者の人たちや子ども達が過酷な労働を強いられるという皮肉な構図。甘いチョコレートの裏側にある現実を知り、児童労働のない『子どもたちにしあわせを運ぶチョコレート』なのか選ぶことが、まず私達にできる第一歩なのだと感じる。 MCL編集部(ふ)

三冊堂221号 (2015/12/10)