2007年にがんで亡くなった戦場カメラマン鴨志田穣の私小説『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』。アルコール依存症で最愛の妻を傷つけてしまい離婚。10回の吐血。体中穴だらけで、ボロボロになりながらも、アルコールから抜け出せない日々。スリップ(再飲酒)を繰り返した末、ついに、アルコール病棟へ―。そこで出会った人々と脱アルコール生活から見えてきた本当に大切なものの存在。帰りたい場所はひとつだと気がつく。ラストの彼の独白が胸にしみる。
依存症は本人の意思の力ではどうにもならない病気である-。『生きのびるための犯罪(みち)』の著者・上岡陽江。依存症当事者としての経験から、友人とともに薬物・アルコール依存を持つ女性をサポートする「ダルク女性ハウス」を設立する。本書で語られる壮絶な依存症当事者たちの声。暴力を受け続けてきた人が、世の中にはたくさんいて、自分の苦しみ、悲しみ、痛みから逃れる方法として、薬物やアルコールに手を出してしまうという現実を知る。人生で本当に大切なことは困っているときに、助けてほしい!!とSOSを出せることだと著者は言う。苦しいときに助けを求めることは、誰にでも保証されているはずの<権利>だからと。
元兵士の夫に両腕を切られた女性、住民を追い出して、村に住みついた子供兵士…。息をするのも苦しくなるようなモノクロ写真の数々。日本にいると、伝わってくることのない紛争地の実像だ。中南米の紛争地帯を渡り歩く写真家・亀山亮。パレスチナで左目をゴム弾で撃たれて失明しながらも、写真を撮り続け、アフリカの内戦地へと赴く。そこで目にしたものは、日常化した暴力と殺戮。「戦場には必ず加害者と被害者が存在するが、空間や時間軸が少しずれただけで、ひとりの人間がそのどちらにもなりうる―」。著者の写真と言葉に、頁を繰る手が震える。『戦場』。 MCL編集部(ふ)
三冊堂198号 (2015/07/02)