2024年 (令和6年)
7月17日(水)
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 調味料の「さしすせそ」を全て使って味付けされ、日本を代表する和食の一つとされている「すき焼き」。すき焼きの歴史は明治の文化開化にはじまりますが、今や米沢市では郷土料理として確立され、また、割り下で煮る、鍋で直接味付けをするなどの調理方法、使う肉の部位など、位置づけや食べ方が多種多様のようです。「すき焼き」というひとつの鍋に込められた歴史やさまざまな物語を語り尽くす『日本のごちそうすき焼き』は、食事ばかりではない「すき焼き」の側面を見ることができます。

 「すき焼き」といえば、篆刻家・書道家・陶芸家であり、美食家としての顔を持つ北大路魯山人が作った「すき焼き」が有名で、レシピによる再現もされているようです。坂口安吾、椎名誠、池波正太郎など37人の著名人が書く、「鍋」をテーマにしたエッセイのアンソロジー『ぐつぐつ、お鍋』。その中に収録されている魯山人の「鍋料理の話」では、出来たてのものを食べるというのだから、そこにはすきがないのである、など、鍋料理の真髄が綴られています。
 魯山人は、なべ料理の材料の盛り方ひとつでも、心掛け次第でくずものの寄せ集めに見えたり、美術品に類する美しいものに見えたりし、盛り方を工夫したいと思う時に食器に対しての関心が湧わいてくるとも述べています。使いやすく描かれた絵や形が楽しい「おてしょう」とも呼ばれている小皿は、観賞用やアクセサリーとしても楽しまれている器なのだそうです。『楽しい小皿』では、その土地の名所を写した諸国名所絵図など500種類を掲載。コレクションの対象の中には、海外への憧れが強かったことを表す「文明開化」と呼ばれるものも。日本には、目で楽しむごちそうもあるようです。 MCL編集部 (そ)

三冊堂197号 (2015/06/23)