2024年 (令和6年)
11月22日(金)
Weather
午前10:00から
午後 6:00まで

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 立春も過ぎ、徐々に春の気配を感じてきていますが、十勝の大地はまだまだ真っ白な雪景色です。でも、十勝の雪景色の季節は残り少ないはず・・・。真っ白な景色に少しだけ思いを馳せたいと思います。一面真っ白な世界と言えば北極と南極。『北極シロクマ 南極ペンギン』は、北極にいて南極にはいないシロクマと、南極にいて北極にはいないペンギンの生態が詰まった写真集です。安心しきってお腹を出して休むシロクマ。お団子のようにくっ付いてこちらを見る3頭のシロクマ。荒波にじっと耐えるペンギン。ジャンプするペンギンの背景は白と青だけの世界。どうしたらこんな写真を撮ることができるのでしょうか?冷たい雪と氷の世界に生きる彼らの健気な姿に心はほっこりしてきます。

 中原中也の詩と石井昭の影絵が合わさって1冊の絵本になりました。「幼年時 私の上に降る雪は真綿のようでありました・・・」とうたう「生い立ちの歌」の絵は、雪明りの夜空に様々な結晶の雪が降ります。『汚れっちまった悲しみに・・・』とうたう表題作の絵は、民家の窓からもれる灯りをバックに一面の真っ白な雪の上に残る足跡が寂しく語ります。美しい影絵は切なく哀しい詩と相まって心奪われます。
 地下鉄駅を出たら、初雪が落ちてきた。札幌に転勤してきた亜希子が冬景色を思い起こすと自然と一緒に蘇ってくる彼女。ハクモクレンの木の下で初めて会った時に懐かしさを覚えたのはなぜなのか?昨冬は雪の中でだけ会うことができたその老女に今年の冬も会えるだろうか?「わたしは冬の夜にしかあるかないの」と言っていた彼女はだれなのか?時の残酷さと優しさを描いた短編集『あの日にかえりたい』の「夜、あるく」は不思議で暖かいお話です。 MCL編集部 (紀)

三冊堂180号 (2015/02/26)