「だるまちゃんとてんぐちゃん」シリーズや、「どろぼうがっこう」など、数々の人気絵本を世に送り出してきた加古里子さんの自伝的エッセイ『未来のだるまちゃんへ』。敗戦を機に、残りの人生をこどもたちのために役に立ちたいと考えた加古さん。セツルメント(今でいうボランティア活動)で、大切なことはすべてこどもたちから教わったと言います。これからを生きるこどもたちには、自分で考え、自分の力で判断する賢さを持ってほしいとエールを贈り、今の社会に対しては、同じ間違いを繰り返すことがないようにと警笛を鳴らしています。心に留めておきたい言葉であふれているこの本。何度も読み返したいと思います。
前述の加古里子さんをはじめ、太田大八さん、瀬川康男さん、赤羽末吉さんなど、世代を越えて読み継がれる絵本作家たちの創作現場を紹介した『絵本作家のアトリエ1』。それぞれの戦争体験を通じて感じたことや、絵本の裏にかくされた思いが、短いインタビューの中から伝わってきます。巻末には、加古さんを最初に見出した福音館書店の編集者・松居直さんとの特別対談も掲載されています。一つひとつの絵本に込められた作家と編集者の思いを感じることのできる貴重な本です。
こどもたちの未来を案じていた大人がここにも-。2014年2月にお亡くなりになった詩人まど・みちおさんが、84歳のときに、ふるさとの小学校に送った手紙『こどもたちへ』。こどもたちに、大切なことを伝えたいという思いで、100歳になっても詩を書き続けたまどさん。まどさんの詩は、どれもこどもたちにわかる言葉で書かれています。未来をつくるすべてのこどもたちに送られたとも言えるこの手紙が、多くのこどもたちに、そして私たち大人の心に届くようにと願わずにはいられません。 MCL編集部 (ふ)
三冊堂179号 (2015/02/19)