2024年 (令和6年)
4月28日(日)
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午前10:00から
午後 6:00まで

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 カウンター席だけの小さなバーに居合わせた、歴史学教授と美人助手、雑誌ライターの男。日常的に使われている仏教用語の雑談から、ライターの「お釈迦様は悟りを開いてなんかいない」という爆弾発言によって白熱の歴史検証バトルへと展開。邪馬台国はどこか、聖徳太子は存在したか、 キリストは本当に生き返ったかなど、バーで会う度に熱をおびる歴史談義は、会話という論理の積み重ねで分かりやすく、その意外性のある斬新な切り口にぐっと引き寄せられます。これまでの定説をひっくり返す『邪馬台国はどこですか?』。

 ブツ切りになりがちな歴史を年代・国を縦横無尽にまたいで紡ぎ、一つの「まちがい」を導き出す『誰も知らない世界と日本の間違い』。歴史的事件の背景や影響の深く、柔らかな言開きは、歴史や宗教、文化が何となく遠くに感じている人にとって、知ることの面白さに気づく扉を開いてくれます。「二つの世界戦争のあいだ」の章では、イスラム的”エミグレ”のパワーなど、中東の問題についてふれています。
 人間の「原罪」と「許し」がテーマの物語『氷点』。妻が彼女を慕う青年医師と会っている最中に愛娘を失ったことから、夫は「汝の敵を愛せよ」という言葉を「生涯の課題」という言葉にすり替え、かくれみのとして、妻への復讐のため犯人の娘を養女に引き取ります。そうとは知らず養女・陽子を溺愛する妻は、真実を知ると一変、陽子に冷たく当たり始めます。人の心に潜むエゴや嫉妬、憎しみなどの弱さと醜さを見つめ、複雑な感情を描く三浦綾子の代表作。今だからこそ読み返したい一冊。 MCL編集部(そ)

三冊堂177号 (2015/02/05)