2024年 (令和6年)
11月22日(金)
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 夫・吉村昭への想い、尽きることなき文学への情熱。作家として妻として、しなやかに歩み続けた遥かなる歳月。吉村昭を看取ったときのことや亡くなった直後の状況、それに続く津村節子の心境、暮らしぶりといった内容が瀬戸内寂聴、佐藤愛子らと語り明かした12編の対話集。『遥かな道』は、津村節子の人生の中で、いかに吉村昭の存在が大きかったか、という事がよく分かる一冊です。

 ちょっと怖くて愛おしい、5つの「偏愛」を描いた短篇集。表題の『妻が椎茸だったころ』は、定年退職の二日後、妻を突然失った主人公の泰平が、妻が楽しみにしていた料理教室に、なりゆきで行くことになってしまう。ちらし寿司用の椎茸を甘辛く煮て持っていかなければならないが、「干し椎茸」と格闘するうちに、妻が書いていたノートを発見する。料理のレシピの他に、自慢や愚痴が綴られていた中に「私が椎茸だったころに戻りたい」の一言。妻は椎茸だったのか?妻の残したレシピを見ながら料理に取り組む泰平は、妻の気持ちを理解していくようになっていく。 そして、泰平は自分が椎茸だったころを思い出すことができる。通り抜ける風を感じている姿は、一本ではなく、もう一本、寄り添って揺れる椎茸がいる。 
 そこまで深く、生涯をかけて人を愛することができるのだろうか?『智恵子抄』は、妻、高村智恵子のことであり、彼女と結婚する以前から彼女の死後の30年間にわたって書かれた、彼女に関する詩29篇、短歌6首、3篇の散文が収録されています。著者にとって最愛かつ創作の源として存在した智恵子。死後に見つけて、一人味わい詠った「梅酒」。絶望と喪失はめぐりめぐって、ふたたび発見へ繋がる。自分は妻のことをどれだけ想っているのか…。 MCL編集部 (敬昌)

三冊堂175号 (2015/01/22)