2024年 (令和6年)
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 それは「名誉の殺人」と呼ばれる。女性の婚前の性交渉は家族の名誉を汚したとされ、娘を抹殺することで一族の男たちは汚名をそそぐ。1970年代の後半、中東シスヨルダンの小さな村で17歳の少女スアドは生きながら家族によって火あぶりにされました。恋をして妊娠したから・・・。婚前交渉は家族の恥だから。『生きながら火に焼かれて』は家族の名誉のために火あぶりにされながら、奇跡的に生き延びた著者が告発する衝撃のノンフィクションです。このような事件(因習)はスアドだけに起こったことではなく、中東およびヨーロッパの各地で犠牲となっている女性の数はスイスの保護団体が出している推定数だけでも年間6,000人なのだとか(訳者あとがきより)。

 社会的に名のある医師が自宅で働く少女に身体的興味を抱く…。そんな状況に何の問題もない社会がありました。1820年代のアメリカ、ノースカロライナ州で自分が奴隷とは知らずに育ったハリエットは、女主人の死去によりある医師の奴隷となりました。好色な医師から逃れるために15歳の少女はある決断を…。そして驚愕の逃亡生活を送ることになります。『ある奴隷少女に起こった出来事』は、「白人が書いたノンフィクション」とみなされ長く歴史から忘れられていましたが、近年の研究により、黒人奴隷であった著者の事実に非常に忠実な自伝であると証明されると現代人の深い共感を呼びベストセラーになっているそうです。
 黒人娘セリーは、少女時代は父親から暴力を振るわれ、16歳で名も知らないミスター**のもとへ厄介払いのように嫁がされます。夫の暴力の下で毎日を耐えていましたが、愛する妹も夫に襲われ、失意のまま、アフリカへ渡ります。黒人社会の中で巻き起こる差別を始めとしたさまざまな問題に立ち向かうセリー。すべては自由を獲得するため…。『カラーパープル』は、アメリカ繁栄の踏み台となった側の人間たちがアリスという媒体を得て自分の体験を語った記録ともいえるそうです(訳者解説より)。 MCL編集部 (紀)

三冊堂161号 (2014/10/16)