2024年 (令和6年)
11月22日(金)
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 土用の丑の日や体力をつけたい時に食べるウナギは、日本人にとって身近な食べ物ですが、生物としてのウナギの生態は解明されていないことが多く、謎が多い生物です。しかし、近年の研究によってウナギがどこで産卵し、どのように成長していくのかが徐々に明らかになってきました。そこでまずは絵本『うなぎのうーちゃん だいぼうけん』で、ウナギがどんな生き物であるのか知ってみましょう。ウナギの研究をした作者が、子どもたちにもわかりやすいように誕生から一生を終えるまで、うーちゃんを主人公に描いています。日本からはるか遠い南の海で生まれたうーちゃんがどうして日本の川へやってくるのか、どうやって川で過ごして成長していくのか、生まれた海へ戻るまで長い年月をかけた大冒険がわかりやすく楽しめます。うーちゃんが再び海へ戻る時に、川へ上る時とは違って、周囲の自然環境が悪い方向へ変わっている場面がありますが、私達人間が自然の生態系を変化させていることに「ドキッ」とさせられます。

 絵本でウナギの生態を知ったところで、二冊目はウナギを追いかける男たちの話です。ウナギの生態研究で世界をリードしている、東京大学大気海洋研究所の塚本勝巳教授(当時)とそのスタッフの番頭格である著者が、地球上に生息するウナギ全18種の採集を挑戦、達成した「アフリカにょろり旅」(講談社刊)とその続編「うなドン」(講談社刊)に続いて、この『にょろり旅・ザ・ファイナル』が三部作目となります。これまで採集した全18種のウナギの生態や進化過程を調べていく中で、東大海洋研のスタッフが産卵地を特定するために赤道近くの太平洋上で採集したウナギの子供の中から、18種にはいない種を見つけます。著者は新種発見のわずかな可能性に賭けて、後輩と冒険好きな作家と共にフィリピンへ向かいます。ウナギの生態の解明・新種の発見というところでは、研究者たる考察に満ちており、生物が好きな人にとってはとても興味深く読むことができます。それに加えて、爆笑エッセイとしての要素もふんだんに盛り込まれており、理系の読み物が苦手な人にも面白く読むことができます。男臭さ満点、汗と涙の男3人旅の感動・爆笑の記録です。 
 そして三冊目は、高田郁さん著作「みをつくし料理帖」シリーズ3作目の『想い雲』です。江戸時代を舞台に、女料理人・澪が働く先の小料理屋「つる屋」の店の人たちや常連のお客さんなどに支えられて、様々な人間模様に巻き込まれながらも、自身の腕を磨きながら素敵な料理を作っていきます。この「想い雲」の中の第一話「豊年星-「う」尽くし」では、土用の入りが近づいてきたので、澪は暑気払いに出す料理の献立に頭を悩ませます。江戸のある店では鰻を出すということを聞きますが、「つる屋」では値の張る献立を出すことは難しい。でも、お客さんにはこれからの夏に向けて滋養をつけてもらって喜んでもらえる料理を出したい。そこで澪が考えた献立は、鰻を使わずに「う」のつく料理の品々でした。澪が考えた献立を読んで、「なるほどなぁ」と感心してしまいました。どんな献立にしたのかは、ぜひ読んでいただきたいです。高田さんが表現する調理の様子や出来上がった料理は、まるで目の前にその料理があるかのような感覚に陥ります。絶滅危惧種に指定されたニホンウナギではありますが、日本人にとっては季節を感じる大切な食べ物です。いつまでもウナギの姿が見られるように、大事に思いながらこの三冊を読んでいただきたいです。 MCL編集部 (修)

三冊堂162号 (2014/10/23)