2024年 (令和6年)
5月19日(日)
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 食を探求し続けてきた料理研究家・辰巳芳子と福岡伸一、川嶋みどり、細谷亮太、竹内修一の4人の識者が『食といのち』をめぐり、考察を深める対談集。「食べることが生きる基本であり、食べることをないがしろにしてはちゃんとした人生はあり得ない」と、言いきる辰巳さん。日本の気候風土によって育まれた食文化には、それなりの意味があるといいます。食をおろそかにし、旬のものを美味しく食べることを忘れかけてしまっている今、「食べることはどういうことか」自戒の念を込めて、見つめなおしてみようと思いました。冒頭には、辰巳さんのいのちを養う四季のお粥とスープのレシピが掲載されています。

 NHKの取材班が子どもの食事の実態を調査した『知っていますか子どもたちの食卓』。2000年に発行された本ですが、子ども達を取り巻く食事の内容に愕然とします。子ども達が、普段の食事の様子を描いた絵をみていくと、食卓に一人で座り、つまらなそうに食事をしている絵が目立ちます。「孤食」「小食」「個食」「粉食」「固食」・・・。子どもたちの絵から、さまざまな「こ食」の実態が浮かび上がってきます。昔のドラマにあった「お父さんが卓袱台をひっくり返す」シーンは、家族で食卓を囲むことが当たり前だったからこそのシーンだったということに、今更ながら気が付きました。「一家団らん」という言葉も使われなくなり、みんなで食べる給食が一番楽しいと答える子ども達。親も子も忙しい現代の社会ですが、「家族の食卓」は、楽しいものでありたいと切に感じます。
 妻・乙美を亡くし、元気を亡くしてしまった夫・熱田良平と、嫁いだ先で傷つき、実家に戻ってきた娘・百合子。生きる気力を亡くしてしまった二人が、つらさを乗り越えて再生に向かうまでの物語『四十九日のレシピ』。台所から、いつも美味しい匂いがしてきたほどに、料理(=食べること)が大好きだった乙美。しかし、二人には亡くなった乙美の食べ物にまつわる苦い思い出が―。自分がいなくなっても、明るく生きていけるようにと、乙美が最愛の二人に残した「暮らしのレシピカード」。そこには、あふれるほどの愛がたくさん詰まっていました。「レシピ」という言葉には、「処方箋」という意味もあるんですね。四十九日を迎える日まで、このレシピ(処方箋)によって、二人の心がだんだんと癒されていきます。自由に生きていいんだよと背中を押してくれる本です。 MCL編集部 (ふ)

三冊堂160号 (2014/10/09)