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情緒障害児を教えるトリイの教室に来た6歳の無言症の少女シーラ。垢で黒ずんだ顔に敵意むきだしの目をしたその子と辛抱強く接していくうちに、彼女が知的障害児どころか、ずばぬけた知能の持ち主であり心身に虐待による深い傷を負っていることがわかります。『シーラという子』は、トリイの献身的な対応で固く閉ざされた心をおそるおそる開いていくシーラの姿の置かれた状況に怒りを覚えながら読み進めることになるかと思います。これがノンフィクションだなんて…。
老人病棟の看護師として献身的に働く久坂優希は、子供の時、2人の少年とともに霧の霊峰で事件を起こしたことがあります。その秘密を抱えたまま別れた3人が、17年後再会しました。そして過去を探ろうとする弟の動きと殺人事件の捜査によって優希の平穏な日々は終わりを告げます。『永遠の仔』は読み進めていくうちに胸が苦しくなり、ミステリーなのにミステリーとして読めないかもしれません。
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋の男が殺されました。容疑者は次々に浮かびますが、結局、事件は迷宮入りします。事件の際、被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」として死亡した女の娘・西本雪穂の2人はともに小学生でした。その後、全く別々の道を歩んで行きますが、2人の周囲に見え隠れする、幾つもの犯罪。だが、何も「証拠」はありません。事件から19年、暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女だった2人に何があったのか。『白夜行』はググッと重たい読後の1冊です。 MCL編集部(紀)
三冊堂141号 (2014/05/29)