2024年 (令和6年)
12月22日(日)
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 そうだ、ユングが好きだったんだ、私。 「まぶさ(幕別ブックサポーター)養成講座」の課題で、数十年前の自分と思わぬ形で「対面」した。課題は「○○な○○」という空欄を埋める形で自分を定義するというものだった。最初は気軽に記していたが、20個はつらい。頭をひねっているうちに「フロイトも悪くないと考えるユング好き」という言葉が浮かんできた。

 ユングに出会ったのはさだかではないが、高校生ぐらいだったと思う。夢分析にはまり、夢日記をつけていたこともあったなあ。人間を「内向」「外向」に分け、さらに「思考」 「感情」「感覚」「直観」に分類したら、私は何だったっけ? 人類に共通する集合的無意識なんていうのもあったなあ… と思いを巡らしているうちに、無性にユングに関して調べたくなった。幕別町図書館などで何冊も本を借り、読みふけった。

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 スイスの精神医・心理学者ユング(1875-1961年)はオーストリアの精神分析学者で、夢や無意識に注目したフロイト(1856-1936年)に傾倒し、親交を深める。のちに無意識を解釈をめぐり、フロイトと対立し袂を分かった。その後、ユングは分析心理学を創始し、シンクロニシティ(共時性)にも注目した。スイスにはユング研究所があり、ビジネスパーソン や占星術師ら多彩な人たちが学びに訪れているようだ。

 ユングを日本に紹介したのは、文化庁長官も務めた、河合隼雄さん(1928-2007年)だった。日本人初のユング派分析家の資格を取得した。おもちゃを使った箱庭療法も日本に導入した河合さんは作家村上春樹さんとの対談が書籍になるなど、多方面で活躍した。易や曼荼羅にも関心を深めたユングは、欧州では際もの的に見られることもあるようだが、日本で評価を得ているのは、河合さんの功績が大きいという。

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 ユングからたどり着いたのが、映画監督大宮エリーさんのエッセー集「生きるコント2」(文春文庫)だ。ユング派分析家がブログで大宮さんが会社をやめたきっかけを書いた掌編を紹介していた。ある行者に「自分の気持ちが一番」と、直感を大切にする訓練を勧められた大宮さん。蕎麦を食べたいと思ったら蕎麦を出す店に行き、「職場に花」と感じたら花を毎日飾った。ある日、飾る花が浮かばず、心の声を聴き退社を決めた。

 約50本のエッセーは、「キャロット」と呼んでほしいという、ユニークな母親、遅刻癖のあるマネージャーらとの抱腹絶倒のエピソードが満載で、げらげら笑いながら、読んだ。がんで亡くなったレストランの女主人とのほろりとする交流もつづられており、落ち込んだ時に、そっと慰めてくれる友達のような一冊だ。まぶさのおかげで「 生きるコント」に出会った。まぶさは、暮らしを豊かにするツールになってくれる。お勧めです。

文/まぶさ(黒井ねこ)