2024年 (令和6年)
12月22日(日)
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午前10:00から
午後 6:00まで

幕別町で活躍する様々な顔を紹介し、その本棚をちょっと覗かせていただく「あの人の本棚」。第2回は、幕別町図書館の本館から歩いて数分のところで、ユニークなお店「山本商店」を営む山本順一さんにご登場いただいた。山本さんのお話には、これから“コミュニティー図書館”として新しい図書館像を目指す幕別町図書館に、とても大事なヒントが盛り沢山。勉強になりました!

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山本商店との出会いは1つのプリンだった。幕別町図書館の長谷前館長が買ってきてくれたプリンをひと口食べて、あまりの美味しさに声をあげた。「どこのプリンですか!」「そこの裏の山本商店さ」。それ以来、毎週木曜日に新聞に織り込まれるチラシが気になり始めた。1つ1つの商品を紹介するキャッチコピーが、まさに踊っているのである。それからしばらくして、件のプリンはあれよあれよという間に全国的なヒット商品となり、大手コンビ二の定番商品ともなった。山本商品の目利き力おそるべしなのである。

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まずは早速、お店にうかがうことにした。いきなり「究極の美味しさ 生プリン メチャ旨」の看板が目に飛び込んできた。入口で出迎えてくれた店長こと山本さんに導かれて店内へ。

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店頭には、なぜかモアイ君。「寒いのも、もう終わりやネ!!」の言葉にホッとする。鼻のライトが気になりますが…。店内に足を踏み入れると、そこには山本商店ワールドが!あの折り込みチラシ同様のポップが、まさに踊っているのである。百聞は一見にしかず!まずは、その様子をじっくりとご覧あれ!

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それぞれの商品について書かれた、手作りのポップ。普通、これだけプッシュされたら辟易となるはずが、全く嫌味がなく、むしろ次々読みたくなるのが不思議。これはきっと、店長自らの言葉で、自らの手で1つ1つの商品を本気で紹介しているからなのだろう。そんな事をぼんやり考えながら、店内を探索。お目当ての、あの商品は・・・

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あっ!あった!矢印に導かれるように棚の前に来ると、ありました!これが山本商店との出会い、その絆となった究極のプリン!「追い求めていた味にやっと出会えた!!」まさにその感じなのです!

店長の山本順一さんは、この山本商店の3代目。つまり祖父が昭和26年に創業した。「お菓子や食品を扱う普通の田舎の商店でしたよ」と笑う。店を継いでも、売上げは落ちて行く一方。そんな中で、5年ほど前に転機が訪れた。経営コンサルタントの小坂裕司氏が主催する勉強会に参加するようになったのだ。「将来的な見通しもなく、どん底の頃で、藁をもすがる思いで参加しました」という。

その実践のポイントは、これまでの「モノ」にフォーカスをした「どう売るか」の商売ではなく、「ヒト」にフォーカスすること。つまり、ヒトがモノを買う時に必ずともなう行動に着目。「なぜ、商品を選ぶのか。選んで、買物カゴに入れて、レジに行って、お金を払う。この一連の行動に着目するんです。この考えには驚きました」と山本さん。

その勉強会で、全国の異業種のメンバーとの交流を深め、刺激をうけながら、気がつけば商品が増えていったという。その中でも、思い入れのあるのがプリン(現在販売中の、あの「究極のプリン」の前に販売した商品)。ひと月に200〜400個と、町の小さな商店では、破格な数を売り上げた。自分の舌で確かめ、自分の言葉で紹介する。この時に、この方法が正しいことを実感した。その結果、山本商店は、ユニークなポップが並ぶ店内へと変化をとげていった。

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「こだわって紹介した商品に関しては、ほぼロスなしです」と胸をはる。「ポップを立てて、チラシにいれて、値引きはしない。すべて定価販売がうちのポリシーです。だからこそ重要なのは、きていただくお客様とのコミュニケーションであり、信頼関係であり、絆なんです」。そう語る山本さんの本棚の一端を見せていただきながら、さらに店作りの極意をお聞きした。

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「いやぁ〜本を読み始めたのは、勉強会に出始めた頃からだから、本当にここ数年なんです」と照れ臭そうに笑う山本さん。「こんなに商売のネタ本を晒しちゃっていいのかな(笑)。ひとつにハマると、面白くて、次々と本を買ってしまうんですね」。

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「僕が最初に読んだのがこれ。小坂裕司『失われた売上げを探せ!』。これでいっきに意識が変わった。商売の見方が、まったく違う角度から見ているんですね。なるほどなぁ…と。不況だ不況だと皆いってるけど、実は見方を変えれば違うんだって。まさに目から鱗です。」

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「小坂先生の本で、人間の行動って面白いなと思って、次々と本を読むようになりました。どんどん読んでいくうちに、神田昌典さんの影響で“ダイレクト・マーケティング・レスポンス”というのを知りました。これを読むと、また面白い!なるほど!の連続。この考え方がアメリカで出てきたのは100年以上前ですからね。それでも、全く古くなってない。すごいですよね。それがやっと神田さんによって日本にとりいれられたんですね。」

編集部「わぁ、付箋やラインマーカーや書き込みでいっぱいですね!」
山本「いやぁ、まいったなぁ。これ、なんだか商売のネタがバレバレじゃないですか(笑)」

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「続いて、ジョセフ・シュガーマンという、この人も“ダイレクト・マーケティング・レスポンス”ですが、これがまた素晴らしい」。

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山本「ほら、ここ「ヒトはみんな物語が大好き」って書いてあるでしょ。これ、ヤバいなぁ。全部バレちゃうな(笑)あいつ、こんなの読んでやってたのかって(笑)」。
編集部「物語マーケティングって一時流行ましたね。ところで最近は、ビッグデータの時代っていわれますけど、山本さんの実践していることは、その真逆ですよね(笑)」。
山本「データって何がデータなの?なぜ、この商品が売れたの?そこまでデータからはわからないでしょ。ヨーグルトが1日100個売れた。売れたのは値段なのか、味なのか。それはポスデータを睨んでてもわからない。なぜ、この商品がいいのか。それを教えてあげるのがプロの商売人ですよね!」。
編集部「そこに山本商店の目利力があるんですね!」

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編集部「この本もラインマーカーがすごいですね」。
山本「これが地元では、なかなか理解されないんですよね」。
編集部「そうなんですか?幕別にそういう考えが浸透すれば、もっと活気が・・・」
山本「ちょっと淋しいですよね。地方から、わざわざうちの店にいらっしゃる方がいるのに、地元では、なかなか理解されないですからね。「お客さんを囲い込みしている」とか。「教祖様か」とかね(笑)」
編集部「あぁオウムか?とかね(笑)先を走る人は、皆そういわれるっていってますね」
山本「お客様と絆ふかめて、信頼関係を築いて、そこで初めて商売してっていうことをいうと、まさに「オウムか?」ですからね」
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山本「これは、何かの本で紹介していた新書ですが。読んだらおもしろかったですよ。このヒトのビジネス感覚はすごい」。
編集部「島田紳助さんですね。復帰待望論もあるみたいですね。『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する』ってタイトルに魅かれますね(笑)」

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山本「作家の方に聞くと、本が売れればいいってことで、出版社が題名とか決めちゃうそうですね。題名にしても、キャッチコピーにしても、作家さんの言いたいことよりも、本を売るためにが優先されてしまうって。だから、買って失敗した本が多いこと(笑)最近は、ネットで「これは怪しいぞ」って、チョイ見せのサービスで、よく中身を確かめてから買うようになりました(笑)」

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山本さんに幕別町図書館のビジネス書の棚を見ていただいた。「ちょっと薄いかな?」といって笑う。

昭和43年生まれ。生まれた時から、この界隈の本町育ち。幕別町図書館(本館)がなかった頃から知っている。ちなみに本館のまえは、青少年会館があった。テレビゲームもない時代、少年たちは集まっては、野っ原で野球に興じた。

編集部「店があるこの本町周辺って、どういう土地なんですか?」
山本「いい人が多いですよ。年配の方が多いので、皆さんいい人ですね。いや、うちにくるお客さんが、みんないい人なのかな?(笑)」
編集部「店にあわないお客さんはどう対応するんですか?」
山本「実は、あまりあわないお客さんは、自然と絞られていくんですよ。安売りをやめて、安売り目当てのお客さんがこなくなって、いいお客さんが残った。そうなると、そういうお客さんに、いい商品を届けたいという気持ちがつのります。」
編集部「良い相乗効果も生み出されるってわけですね」
山本「だからこそ、手書きのチラシなど、定期的なコミュニケーションはかかせない」
編集部「“顔がみえる”商売の基本ですね」

山本さんに、この先の希望を聞くと、別に店を大きくしたいわけではなく、自分が選んだ商品を喜んでくれるお客さんを増やしたいという。1つ1つ商品を開拓して、喜んでもらえるお店にしていきたいのだと。幕別町図書館も、今、まさに本を読む楽しさや喜びを伝えるため、1冊1冊の本を確かめて、紹介していくような図書館を目指して改革しようとしている。そのために、日本中どこの図書館に行っても同じ本棚の並びではなく、本当に地元のヒトに読んでほしい本を、ワクワクするような並び方で紹介したい。今回の山本さんのお話には、たくさんのヒントがあるように思えた。まずは、手書きのポップから見習おうかしら?(笑)山本さん、ありがとうございました。