2024年 (令和6年)
12月22日(日)
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午後 6:00まで

幕別町で活躍する様々な顔を紹介し、その本棚をちょっと覗かせていただく「あの人の本棚」。第3回は、町の平和を守る消防職員の高橋直樹さんにお話をうかがいました。本を読むことが、日々、危険と隣り合わせの仕事をするうえでのストレス解消と言う高橋さん。読書による気分転換のお話は、まさに医鬱排悶!こちらまで清々しい気持ちになりました。

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幕別町は、幕別・札内・忠類地区のそれぞれに消防署があり、高橋さんは、高校卒業後、平成7年に採用されて以来その3カ所を数年おきに異動。取材当時は札内支署に勤務。現在は忠類支署に従事しています。
札内支署の隊員は総勢17名。消防隊員は土日・祝祭日、日中・夜間問わずローテーションで勤務します。「1年の3分の1は消防署で生活をします」という発言には驚き。

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救急救命士の資格を持つ高橋さんは、救急車での乗務が多いのだそう。札内支署では、1人が担当する出動頻度が、救急車だと月20数回。消防車だと年間約10件といいますが、常に危険と隣り合わせなのです。

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「今までに経験した大きな火事は、比較的大きな工場の火災。消し止めるまで、その日の夕方から翌日の夕方までかかりました。帰ってきたのは、出動から24時間以上経ってからでした」と、高橋さんは伏し目がちに振り返る。
「一番怖い思いをしたのは煙です。空気呼吸器を背負っていましたが、恐怖を覚えました」。

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学生のころから体を動かすことが好きだったこともあり、消防職員を目指した高橋さん。小学生から社会人になっても続けていた好きな野球は、7年前から離れているのだとか。「仕事上、やっぱり何かしらストレスは常に受けているんじゃないかな」と苦笑いする高橋さんの今のストレス解消が、読書なのです。

「きっかけは、赤川次郎のシリーズものなんです。活字ばかりですから、嫌になるかなと思ったんですけど、そこで苦にならなかった。もともと本は嫌いではなかったので」。

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昔の札内支所の2階にあった札内分館に自転車で通い、マンガのほか、ナイチンゲールや夏目漱石など歴史上の人物の伝記を読むのが好きだった少年時代。高橋さんのお子さんも、しっかり本好きのDNAを受け継いでいて、図書館に行くのが大好きなのだそうです。 「子どもと一緒に図書館に行って、子どもが借りているのを見ると、自分も借りようかなと思って。そこから、また図書館を利用するようになりました」。

そこで、家族とよく利用する札内分館で、高橋さんの本棚の一部をみせていただきました。

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「サスペンス、推理、時代物など、ジャンルを問わないで、読みたいと思ったら手を伸ばします」という高橋さんがまず紹介したのは、読書に没頭するきっかけになった、『三毛猫ホームズ』のシリーズ。

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「女性の方がよく読むと思いますが、本当にスッと読める。全シリーズ持っています。読み返すわけではないけど、まだ古本で売りには出しません(笑)」。

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「内田康夫さんの本は、すんなり入ってくるのでけっこう読みました。『怪談の道』は、京都を舞台にした殺人事件。『壺霊』は、有名な壺をめぐった事件ですね」。

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この先は西村京太郎の「十津川警部シリーズ」を全て読んでみたいと、嬉しそうに話す高橋さん。“読みやすさ”というのが高橋さんの読書のキーワードかと思えば、そんなことはまったく無いご様子。

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「横溝正史さんのシリーズも、書き方も表現の仕方も昔の言葉でちょっと難しく感じますが、嫌いじゃないです」。
「映画にもなっていて、『金田一シリーズ』は映画も見ました」。

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「佐伯泰英さんの『八州狩り』は、物凄く強くて負け知らずの武者の話で、シリーズものです。17巻ぐらいまであるんですが、やっぱり、すごく表現が難しいんですよ。登場人物の名前もたくさん出てきて」。

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「テレビでドラマ化された『半沢直樹』はインパクトがありましたが、『高杉良』さんの本とか、こういう金融ものも難しい用語が出てくるけど面白いです」。
「そういう年代なのか、2時間ドラマや映画化されるものが気になって(笑)。どんなストーリーだったか、気が向いた時にパラパラと読めるよう、集めた本を捨てられないでいますね」。

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「『永遠の0』は、映画を見る前に読みたいと思ったのと、普段はこんなに厚い本は手に取らないんですけど、挑戦してみたくて(笑)。映画は結局、見られませんでしたけど」。
「生まれたばかりの子どもを残して戦場で戦っている主人公が、最後まで生き残って必ず帰りたいと願う。自分も子どもをもつ親として、ちょっと共感するものがありました」。

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「難しい言葉も、あれ?これ誰だっけという疑問も流して読み進めちゃいます」と笑う高橋さん。登場人物に感情を重ねるより、その本の世界の場面や状況を楽しむのを好むそうです。
「情景を自分で想像、イメージしながら読むのが好きなんだと思います。時間を忘れて没頭できる。だから、いろんなジャンルのものにも興味が持てるんじゃないかな」。
そう話す高橋さんの本の幅は、どんどん広がっていきます。

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まだ始めたばかりですので日帰りばかりなんですけど、と取り出したのは、『北海道百名山』。
「中でも、雌阿寒岳はおすすめです。登ると360度のパノラマなんです。と言っても、この山は3度登頂して、3度とも天気が悪くて未だにこの写真でしか見ていません。3戦3敗です(笑)。だから、今度こそはって思っています」。

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「この2013mのニペソツ山は、その年に登りたかったんですけど、高度な脚力も装備も必要ということで」。

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「北海道新聞社の『夏山ガイド』は、リックに忍ばせて持っていきます」。

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「立ち止まりながら、本に載っている景色と実際の景色を照らし合わせるのが楽しい。ルートが立体的に出ていて、登山にかかる時間も載っています。こういった本はあまり無いので重宝しています」。

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「百名山ではないですが、アポイ岳も有名でおすすめです。上まで行くと浦河湾も望むことができて、その反対を見れば日高山脈も見られるのが魅力的で」。

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「高山植物もけっこう多くて、その花を目的で登られる方も多いみたいですよ。ぼくは、まだちょっと植物のほうにはあまり興味がありませんが(笑)」。

物語でも、登山でも、ジャンルを問わず、縦横無尽に想像を拡げられる本の世界。リアルの現場に接する高橋さんにとっては、持ってこいの”娯楽”なのかもしれませんね。

まだ興味がないと言っていた高山植物も、そのうち、本と照らし合わせながら楽しまれるかもしれません。

これからも図書館にたくさん通って読書を楽しみながら、町の平和を守るために頑張ってくださいね。たくさんの本を紹介いただき、ありがとうございました。