2024年 (令和6年)
4月27日(土)
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 8月19日(日)に、劇作家の平田オリザさんの講演会を開催します。http://mcl.makubetsu.jp/index.php/events/288307-hirata-01
 平田さんの、脚本、小説、文化論など多方面の著作の中から三冊をピックアップ。『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、 到達しえた極限とを 明らかにして、 上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』は、タイトルのとおり、平田さんが16歳の時に自転車で巡った世界1周の旅を振り返った手記。それは単なる「旅行記」ではなく、その国の歴史や思想など、深いところまで辿る16歳とは思えない多角的な視点に驚かされ、平田さんの原風景はここにあるのではないかと思えます。旅立ちの時、友人のユウスケから貰った手紙にある「オレたちを、心の旅に同行させること!!」という言葉。本を開くと、平田さんの、その時に受けた感情に寄り添っているような気分になります。

 ―わたしたちは、人生で最高の瞬間を全身で感じていた―。地区大会止まりの弱小演劇部が、全国大会を目指して高校演劇部最後の1年をひた走る小説、『幕が上がる』。ももクロが主演し映画化もされました。高校演劇は、年に1回しかチャンスがないそうで、そこに辿り着くまでの緊張感や希望、挫折感がありありと感じ取れます。作中、図書館が登場するのが嬉しい作品。小中学生向けにノベライズ化した青い鳥文庫版も出版されています。
 明治近代の成立と戦後復興・高度経済成長という大きな坂を登り切った日本。衰退期を迎えようとする日本で、日本人がどのように大きな坂、急坂をそろりそろりと下れば良いのか、あたらしい「この国のかたち」を探る『下り坂をそろそろと下る』。日本は、もはや工業立国ではないということ。もはや、日本は成長はせず、長い後退戦を戦っていかなければならないこと。そして、日本は、もはやアジア唯一の先進国ではないということ。これからの日本は、この三つの種類の「寂しさ」を受け止め、受け入れ、急がず踏みとどまることが必要だと述べています。冒険した人の多様性は底知れません。 MCL編集部(そ)

三冊堂361 (2018/08/16)