2024年 (令和6年)
4月27日(土)
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午前10:00から
午後 6:00まで

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 今回ご紹介する3冊はいずれも小学校高学年~中高生をターゲットに発売されたいわゆる「YA」小説です。が、そうとは思えない衝撃の展開や重いテーマで大人の方でも十分読み応えのある作品だと思います。1冊目は『ひとりじゃないよ』。等身大の中学生たちの悩みや恋を描いた「泣いちゃいそうだよ」シリーズの第4弾である本作ではシリーズ史上最大の事件が起きてしまいます。晴れて大好きな広瀬くんと同じ高校に合格した凛は中学最後の春休みを満喫中。そんなある日、部活の後輩である静音から電話が。静音は何だか悩みがあるようですが、凛は広瀬くんとの約束に気を取られて有耶無耶にしてしまいます…家族や友だちなどの問題と真正面から向き合ってきた「泣いちゃい」シリーズ迫真の命の物語です。

 2冊目は『NO.6」。ご存知あさのあつこ先生の人気シリーズ。学園青春ものの印象が強いと思われがちなあさの先生ですが、本作はそんな要素が全くないちょっぴり異色の作品です。舞台は人々の生活の全てが適切に管理(支配)された近未来。主人公の少年・紫苑は将来を約束されたエリートとして、理想都市「NO.6」内の高級住宅地「クロノス」で何一つ不自由ない生活を送っていました。そんな生活に密かに閉塞感を抱きながら…。そんな彼の運命は12歳の誕生日に出会った同年代の少年「ネズミ」を匿ったことで一変。4年後、とある事件の中でネズミと再会した紫苑の物語が動き始めます。あさの先生は2巻のあとがきで「(劇中で)ネズミが紫苑に投げつけた辛辣な言葉の数々は、そのままわたし自身に突きつけられた刃」だと語られていました。とても「きれい」とは言えない「本当」とあなたは向き合えますか?
 最後にご紹介するのは『キノの旅』です。10年以上続く人気シリーズで、私が中学時代に夢中になった小説の一つです。主人公である人間の少女「キノ」と、人の言葉を話せる二輪車の「エルメス」が様々な国(時々実在する某国を風刺したような国も登場します)を旅していくという独特の世界観を持った作品なのですが、シリーズ第1巻収録の「大人の国」、7巻収録の「何かをするために」ではキノの過去にまつわる衝撃的な物語とその悲しい結末が描かれています。これらの話も含めてシリーズで一貫して描かれるテーマは「生きる」こと。7巻のカラーページに書かれてい一文がそれを暗に示しています。「生きていると悲しい。生きることは悲しくない。」 MCL編集部 (小)

三冊堂147号 (2014/07/10)