2024年 (令和6年)
12月22日(日)
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 半沢直樹シリーズ3作目の『ロスジェネの逆襲』。子会社の東京セントラル証券に飛ばされたバブル世代の主人公・半沢直樹が、ロスジェネ世代の部下とともに、親会社から受ける圧力や嫌がらせに知恵と男気で倍返し。「そんな銀行マン、いるわけないよ」と思いつつも、胸のすくスリリングな展開に、勧善懲悪好きは喝采を送る。テレビ放映に合わせたように銀行の不祥事が重なり、半沢現象がより脚光を浴びた2013年、今年の流行語大賞に「倍返し」は当確でしょう。同級生の幾人かが銀行に就職した。彼らは今、どうしているだろう・・・。※ロスジェネ:ロストジェネレーション(さまよえる世代)の略。バブル崩壊後の就職氷河期に新規卒業者となった世代で、正規雇用の道を断たれることが多く、格差社会や貧困の体現者ともされる。

 イソップ童話の影響なのか、働きアリはみんな働き者だと思われている。だが、実際にせっせと働いているのは全体の2割で、残りの7割はノロノロウダウダしていて、1割は一生働かないのだとか。この「働かない働きアリ」の研究、実は北海道大大学院農学研究科によるものだということはあまり知られていない。『働かないアリに意義がある』は、チームリーダーの長谷川英祐准教授によって書かれたもので、面白く、やがて深い話に及び、個体間の反応閾値(いきち)の差異によって、必要に応じた労働力がうまく分配されていることが解き明かされていく。ビジネスの世界では「80対20の法則」がよく使われる。ふむふむ、『釣りバカ日誌』もクレージーキャッツの無責任シリーズも、科学的考察だったのか。
 はたらけど はたらけど猶 わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る――就活で消耗戦を強いられ、やっと入った会社がブラック企業だったと、最近よく耳にする。労働人口の4人に1人は生活保護水準で暮らしていると言われる『ワーキングプア』社会。実際にワーキングプアに陥って生活苦にあえいでいる人たちへのインタビューやさまざまな統計データとともに、その実像を浮き彫りにする。物が売れない。だから景気対策に期待する。しかし、月収10万そこそこでは何も買えず、家を持つどころか、部屋を持ちこたえるだけで精一杯。晩婚化も少子化も、元をたどれば将来への不安に行き当たる。「会社」を反対から読めば「社会」・・・。(な)

三冊堂119号 (2013/12/12)