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朝日新聞などのコラム99篇をまとめた『シネマと書店とスタジアム』。タイトル通り、著者が人生の楽しみの中で群を抜いて素晴らしいとする映画、読書、スポーツ観戦について語ります。破綻のない、柔らかく滑らかな作品と賞賛したのは映画の「ショコラ」。日本の現代小説に稀な疾走感と浮遊感がある吉本ばななの「アムリタ」。今一つ盛り上がらなかった長野オリンピックの開会式。コラムのタイトルに惹きつけられ、ここだけと思いながらも、結果、最後まで読み進めてしまいます。
1970年代半ば、大手企業に内定をもらいシベリア鉄道の旅に出た男子とは異なり、ひどい就職難のためそんな余裕はなかった女子学生たち。与謝野晶子、中條百合子、林芙美子の三人がシベリア経由でヨーロッパを目指したと気が付いた著者が、思い残しの鉄道の旅として三人の軌跡を追った『女三人のシベリア鉄道』。ウラジオストクの極東大学にある与謝野晶子歌碑に彫られたその顔は、似ても似つかないものなど、著者と三人との織り交ざった視点で書かれたシベリアは、多層にその地を感じるような気がします。
第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『ミカドの肖像』。明治天皇がなぜ西洋人の顔立ちのような像になったのか、西武グループがなぜ皇族の土地にプリンスホテルを建てられたのか、三島由紀夫がなぜ自殺したのか。豊富な参考文献と取材により、崩壊と再構築を重ねる日本を紐解いています。本の分厚さもさることながら、その濃い内容に繰り返しページをめくります。 MCL編集部(そ)
三冊堂682(2024/10/17)