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生きていたくないわけじゃない。でも、食べることは苦しい。食べることそのものに嫌悪を覚える女子高生・唯。唯は、食べる行為自体が苦痛であることを、家族にも友人にも話せず、自分を偽り食べ物を取り入れては吐くことを繰り返す。誰にも言えない悩みを抱える自分をどう受入れていくか主人公の心の葛藤を描く『人間みたいに生きている』。
カフェの店長を勤める清瀬は、恋人の松木と“あること”ですれ違い、久しく会っていない。そんなある日、清瀬のもとに、松木が怪我をして意識不明だという知らせが入る。松木の意識回復を待つ間に、松木のアパートで発見した3冊のノート。そこには、子供のような拙い文字がびっしりと書かれていて…。“当たり前”が、誰かを傷つけたり、生きにくいものにしているということ。“当たり前なこと”に無自覚でいた自分と清瀬を重ね合わせる。『川のほとりに立つ者は』水底に沈む石の数を知りえない。だけれども、視野を広く持てる人でありたいと感じた1冊。
PMS(生理前症候群)の藤沢さんとパニック障害の山添君の物語『夜明けのすべて』。生理前のイライラを抑えることができず苦しむ藤沢さんと、ある日突然発作が起き、電車に乗ることもままならなくなってしまった山添君。自分のことで精一杯のはずなのに、お互いの病気を心配して、自分にできることを考える二人。ゆっくりだけど少しずつ前に進もうとする二人を見守る周りの人たちが素晴らしい。ままならないことばかりだけど、悪いことばかりじゃない。できないことは多くても、手段はひとつではないのだから。 MCL編集部(ふ)
三冊堂603(2023/04/13)