家族とは。

　事故の影響で80分しか記憶がもたない天才数学者。そんな博士の元で家政婦として働き、過ごすこととなった私と息子のルート。博士はルートのため、限られた記憶の中で身近な数字に隠されたたくさんの意味を教えてくれます。ルートを大切に思う博士とそんな博士を理解し、そっと寄り添う私とルート。そんな3人の奇妙だけど暖かい関係を描いた『博士の愛した数式』。ちょっぴり切ない物語に多くの人が心打たれた作品です。

　幼い頃に実の母を亡くし、海外赴任を機に父とも別れた女子高生・優子。育ての母とともに過ごす優子ですが、大人の都合で振り回され複雑な家庭環境に身を置くことに。『そして、バトンは渡された』では、血の繋がりがなくとも愛情をいっぱい注いでくれた家族とそんな家族の中で成長していく優子の姿が描かれています。血の繋がらない家族の日常のやり取りが、愛情を注いでもらえる幸せと愛情を注ぐことができる幸せを教えてくれます。血の繋がりよりも大切なものを知ることが出来る作品です。
　ある日、病院からの連絡で自分の息子が6年前に取り違えられた他人の子どもであると伝えられた2つの家族。過去の取り違い事件では100％血の繋がりをとってきた中”交換”が決まり、双方で様々な葛藤を抱えることに。血か、共に過ごした時間か。『そして父になる』は、究極の選択を迫られた2つの家族の姿から真の家族とは何なのかを考えさせられる一冊です。　ＭＣＬ編集部（羽）

三冊堂575（2022/09/29）