昔話をはじめ、絵本や物語の中に動物たちは頻繁に登場します。それほど私たちの生活の中で、動物は身近でかけがえのない存在であると思います。現に、何らかのペットを飼っている人は30パーセントもいるそうです。
今回は動物の中の「犬」に焦点を当て、犬と人間とのふれあいや交流を描いた感動の物語を紹介します。ティッシュとハンカチを準備してお読みください。
『ハチ公物語』は、東京の大学教授の家にもらわれ、ハチと名づけられた秋田犬の話です。ハチは愛情いっぱいに育てられ、渋谷駅を使う大学教授の送る迎えをするようになります。しかし、教授は外出先で急逝してしまいます。それでもハチは毎日渋谷駅に通い、教授が帰って来るのを待ち続けるのです。雨の日も雪の日も、10年間もそれを続けたハチの健気な姿に、もう涙しかありません。これは実話で、のちに忠犬ハチ公の像が建てられ、昔は渋谷駅での待ち合わせの場所として有名でした。(今でもそうなのかはわかりません)
『ベルナのしっぽ』も実話です。作者の郡司ななえさんは、27歳の時に失明し、子育てをするために犬嫌いであるにもかかわらず、盲導犬であるラブラドールのベルナを迎え入れます。苦手な犬との生活に戸惑いながらも、徐々に2人の距離が縮まり、確かな絆が結ばれて行きます。今でこそ盲導犬は広く知られていますが、このお話はまだ盲導犬が一般的ではなかった頃の話ですので、苦労も多かったと思います。ななえさんとベルナの心温まる感動の1冊です。
そして、原田マハさんの『1分間だけ』は、ファッション雑誌編集者の主人公は、とあるきっかけから殺処分寸前のゴールデンレトリバーのリラを飼うことになりました。恋人と一緒に育て始めたものの、日々の忙しさに翻弄され何を愛し何に愛されているのかを見失なっていきます。恋人が去り、残されたリラとの生活に苦痛を感じ始めたころ、リラが病気に侵されてしまいます。愛犬との闘病生活の中で、主人公が「本当に大切なもの」に気づき始めます。私たちが日頃見失っているものを教えてくれる物語です。涙活にもおススメです! MCL編集部(香)
三冊堂532(2021/12/2)