2024年 (令和6年)
11月24日(日)
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 そろそろ夏本番です。肝試しやお化け屋敷が夏の風物詩ですが、今年は新型コロナウイルスの影響でどちらも楽しむのは難しそうなので、代わりに、読むと少し怖さを味わえる本を紹介します。『よもつひらさか』は若干古めで、私が学生の頃に読んだ作品です(年齢がバレてしまいますが…)。短編集で、ジャンルとしてはホラーになるとは思いますが、身の毛もよだつような恐ろしい話はありません。結末も、読んでいるうちに予想できてしまうものが多いのですが、なぜか物語に引き込まれていき、ドキドキしながら読めてしまいます。恐らく、余計なものを削ぎ落としたかのようにシンプルで、流れるような文体がそうさせるのでしょう。圧倒的な恐怖感や驚愕のラストといったものはありませんが、小説ならではの怖さを体験できるおすすめの作品です。

 そのものずばりの書名の『怪談』は、日本を愛してやまないギリシャ生まれイギリス育ちの作家ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が日本古来の文献や伝承をもとに創作した怪奇短編集をイギリスで「kwaidan」として出版したもので、今回紹介するのは2018年に南條竹則氏により翻訳されたものです。「耳なし芳一の話」や「ろくろ首」などおなじみの「怪談」が多数と、虫に関する3つのエッセイが収められていますが、訳が新しいためか、文章も洗練され読みやすく、解説も豊富です。全編読んでいただくと怖さ以上にハーンの「日本愛」を存分に感じることができると思います。

 最後は、絵本をご紹介します。「怪談えほん」シリーズ第一弾の『悪い本』です。人生で初めて出合う書物である「絵本」を通じ、良質な本物の怪談に触れることで、豊かな想像力を養ってほしいという願いが込められたこのシリーズは、宮部みゆきさんを始め、著名な作家さんたちが本気で書いた怖い絵本が揃っています。いくら怖いといっても絵本ですから、危機一髪の場面でお母さんが起こしてくれたり、反省するとお化けが許してくれたりする「ほっこり」する結末があって、「怖い目に合わないように良い子にしようね。」という内容かと思いますよね。ところがこのシリーズは違います。あるのは不条理かつ不可解な恐怖です。小学校高学年以上、むしろ大人の方に読んでいただきたい一冊です。同シリーズでは京極夏彦さんの「いるのいないの」、有栖川有栖さんの「おろしてください」も怖くておすすめです。 MCL編集部(な)

三冊堂460(2020/07/09)