2024年 (令和6年)
11月24日(日)
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午後 6:00まで

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 かき氷、アイスクリーム、みつまめ、ところてん等々、『ひんやりと、甘味 おいしい文藝』は、暑気払いにオススメのスイーツに関わる、幅広い世代の著名人によるエッセイを集めた一冊です。思い出の食べ物に関する記憶は、そのときの五感とともに鮮烈に脳裏にやきつくものですが、本書に綴られているスイーツは、著名人の卓越した文章表現により、自分の出来事のように読者の五感を刺激してきます。暑〜い夏、本書で「涼」を感じませんか。

 1952年の夏、六甲の避暑地で3人の少年少女が出会い、かけがえのない時間を過ごす…『黒百合』は、3人の友情と淡い恋を、少年のひとり寺元進の視点で描いた、文芸とミステリーが融合した青春小説です。物語は一方で、別の「私」の視点から、戦前・戦中の「私」とある女性との交際、それに関わり起きた”事件”が語られますが、「私」が誰なのか謎のまま物語は進んでいきます。後半、3人の少年少女と”事件”に関わる登場人物との接点が徐々に明らかになっていき、ラスト5ページであっと驚く展開と見事な伏線の回収をみせてくれます。
 16世紀から20世紀の西洋名画の恐怖をたどった『怖い絵』は、見る者を戦慄させることを目的とした真に怖い絵ばかりではなく、一見、恐怖とは無縁に思える作品の中に潜んでいる怖さも紹介しています。ドガ、ムンク、ゴヤ…洋画通じゃなくとも知っているような有名画家の描いた作品にも潜む「死」と「狂気」。ぜひ本書で、絵画の発する恐怖の吸引力をご堪能ください。表紙の絵は、ラ・トゥールの「いかさま師」。カードでいかさまをかけようとしているご婦人の極端な横目遣いが、怖い! MCL編集部(吾)

三冊堂360 (2018/08/09)