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1905(明治35)年、写真に魅せられたドイツ人・ワルデマールが世界を知る旅で切り取った記録、『一〇〇年前の世界一周』。庭園や香炉などのさまざまな芸術から、料理や簡素さが際立つ和室などの庶民の風習まで、「すべてが不思議な国」である日本をたいそう気に入った彼は、4か月もの間滞在し当時の日本を写真に収めています。歴史的側面ではない、一旅人が写し出した日本は、とても鮮やかに見えます。
ドイツの上級公務員だったワルデマールは、在日ドイツ大使が開く旧式の儀礼に従って行われる朝食会に、頻繁に招かれるのが悩み事だったのだとか。古代ギリシャから現代に至る文学作品に登場する朝食の場面を紹介しながら、その歴史を紐解く『朝食の歴史』。朝食は共同体や近隣の地域によってさまざまに異なるため、旅する者の朝食は、国際的なホテルが出現するまではその日その日でまったく違っていたなど、旅行者の朝食についても触れられています。
タイの旅行中、マラリアにかかって寝込んでいた私に恋人が買ってきた文庫本。無数の誰かの手にとられたある一冊が、ここタイまでやってきた道のりに想いを巡らす。その時間は、旅の記憶のなかで唯一変わらないものでした。本をテーマにした短編小説『この本が、世界に存在することに』。誰かの記憶をたどることで、どこへでも行けるのかもしれません。 MCL編集部(そ)
三冊堂219号 (2015/11/26)