2024年 (令和6年)
11月22日(金)
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 桜といえば花見という言葉がすぐに返ってきそうなほど、日本ではなじみの深い花見。『花見と桜』は、「桜」ではなく「花見」に注目し、日本文化について面白い花見論を展開している。筆者によると、「群桜」「飲食」「群集」の3つの要素がそろって、初めて花見が成立するという。また、この3要素がそろった花見は、世界に類のない民衆文化だというから、興味深い。室町時代に編まれた閑吟集は、花の宴で好まれる余興の歌と考えられるものが多数あるのだそう。現代のカラオケのデュエットさながらの中世の花見の様子を想像すると、なんだか楽しい。

 花見を題材とした落語もいくつかある。『声に出して、演じる子ども落語 ふしぎなへんてこ話』に収録されている「頭山」。これは江戸落語の名称で、さくらんぼを種ごと食べたケチな男ケチべえの頭から、大きな桜の木が生えてくるというお話。なんとも奇想天外で、オチもなかなかシュール。落語では、こういうオチを「考えオチ」というのだとか。
 日本を代表する随筆家、小説家、文章家たちの綴ったおやつにまつわる随筆を集めた『アンソロジーおやつ』。「花見だんご」を綴った幸田文は、幼い日においしく食べなれたものは、老いてのちもまだ、いつまでも懐かしいという。一番なじみ深いというのが一串に4ヶつきさしてある串団子。一番おしまいに手許に残った一つ行儀の悪いこととわかりつつ、ちょいと後ろ向きになって横食いをする旨さ。わかります。読んでるそばから、よだれがでてくる。うーん。やはり、花より団子ということだろうか。 MCL編集部(ふ)

三冊堂135号 (2014/04/17)