2024年 (令和6年)
12月22日(日)
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午前10:00から
午後 6:00まで

父が愛していたもの〜ラグビーとマージャンと煙草と珈琲と絵、そして本。金八先生を地でやっているようなハードな国語の教師だった。
自分が中学生だった頃、いつも父親が同じ中学にいるという状況を恨んだこともあった。
退職後の父の余生は呆れるほど勝手気儘なものだった。その傍らには、いつも優しく穏やかに微笑む母がいた。この母があっての父だということを自身が一番自覚していたのだろう。
日高の自宅を喫茶店に改装し大好きな珈琲と大好きな人たちに囲まれて、楽しそうにカッカッカッと笑っていた。
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父のもう1つの楽しみは1日終わりに、本に囲まれた書斎で自分のためにいれた珈琲と母の作った甘いものを夜食に一服。
「珈琲は俺の眠り薬だ」と言ってカッカッカッと笑っていた。
書斎の四方が特注の書庫。見事なものだった。しかし不思議と私は父が読書に耽っている姿を見たことがなかった。(苦笑)
いつも、煙草の煙をくゆらせながら眺めては唸り、眺めては撫で〜の繰返しだった。芥川龍之介と夏目漱石が殆どで他にあるのは詩歌が多かった。どれ程好きだったのかもっと話を聞いておけばよかった.......。ただ、大きな地震があったとき「芥川龍之介の下敷きになって死ぬのなら本望だ」と言ってカッカッカッと笑っていた。

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そんな父は3年前に亡くなり、遺品整理を強いられた。
本、本、本......読めない本、袋印刷のままの本、私の頭を悩ませた。
そんな時だった、幕別町図書館が引き取ってくれたのだ。
まるで「わたがし」のような優しい眼差しで司書さんが声をかけて下さった。
「展示にも使えそうで、礼状を出させて頂きたいのですが」。
私は胸の奥が急に熱くなって込み上げてくるものをグッと沈め、「そんなの要りませんよ」と笑い飛ばし「ありがとうございます。父も喜びます。」とやっとの思いで言った。
本を愛する想い、名もなき一人の老人の想いを図書館が繋いでくれた。

今日は父の命日だった。カッカッカッと父の笑い声が聞こえてきた。
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 文/まぶさ(佐々木あずき)